クラファンで3億6000万円を集めた製品は、なぜ謝罪に追い込まれたのか:「優良誤認」の声も(2/6 ページ)
クラウドファンディングサイト「マクアケ」に掲載され、3億6000万円近い資金を集め、反響を呼んだ超音波食洗機「ザ・ウォッシャー・プロ」。その一方で、「優良誤認ではないか」と疑問視する声が上がり、その反応もまた大きくなっていった。同プロジェクトは何が問題だったのか。
「10年間の集大成」誤解を招いた告知文
次世代の超音波食洗機というキャッチコピーが書かれた「ザ・ウォッシャー・プロ」は、自宅のシンクや洗い桶に水をためて、パワフルな超音波により最短30秒で食器類を洗浄できるのが特徴だ。一般的な食洗機での洗浄が推奨されていないフライパンや鍋から、野菜や海鮮、換気扇などの家電部品まで、幅広く洗浄できるということで、話題を呼んだ。
そんななか、プロジェクトページに書かれていた以下の文章に対して、疑問視する声があがった。
『「The Washer Pro」は弊社と超音波技術に特化したテクノロジー会社と手を組んで、1.6億円の研究費をかけて6回モデルチェンジしてきました。10年間試行錯誤を経た集大成ともいえるBDPシリーズ最高峰の機種です』(「ザ・ウォッシャー・プロ」のプロジェクトのページから引用)
弊社とは、同プロジェクトの実行者である「Brand Design Plus(ブランド・デザイン・プラス)」(以下、ブランド社)を指す。この文章は日本語にやや違和感があるが、素直に理解すると、ブランド社とテクノロジー会社が、10年の歳月と1億6000万円の研究費をかけて「ザ・ウォッシャー・プロ」を共同開発したのだと受け取れる。
プロジェクトページには上記の写真が掲載されており、第1代から6代までを2社で共同開発し、今回のプロジェクトで発売される新製品は、その集大成であると理解できる。しかし、実際は違った。
初代から4代までの超音波食洗機を開発したのは、文中で「テクノロジー会社」と書かれている企業だった。ブランド社は5代から開発に参入しており、日本市場での発売にあたって、タッチパネルのデザイン、内蔵基板・電圧・電流の調整、検品、電気用品安全法や電波法の認定の取得などを行ったという。これは、ブランド社自身が2月2日の活動レポートで発表したことだ。
SNSなどの情報を参考に調べたところ、この「テクノロジー会社」とは中国企業のようで、ある企業のWebサイトに、ロゴを除きデザインが似通った超音波食洗機が販売されていた。これについてブランド社に尋ねたところ、以下の返答だった。
「共同開発した企業名は非公開としております。パワー、本体の大きさ、音量、パネル、対応する食器、など色んな面で弊社の商品とは違う商品です。個人向け(B2C)商品か、企業向け(B2B)商品かの違いもあります。中国市場で販売することを弊社として何か言える立場ではないので対処はしておりません」
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