裁量労働制に「向いている」業務・職場は? 考えるべきポイントは3点:裁量労働制の現在地(1/2 ページ)
裁量労働制が適しているのは、どのような業務、職場でしょうか。「仕事の進め方、時間配分について、社員がどの程度の裁量を確保できるか」が判断材料になりそうですが、その際に考えるべきポイントは3つあります。
連載:裁量労働制の現在地
厚生労働省では働き方改革の推進に向けて、裁量労働制を含む労働時間制度に関する検討会が2021年から行われています。あらためて裁量労働制とはどのようなものか、あるいは運用の実態はどうなっているのか、自社における導入の是非はどう判断したらいいのか、制度設計はどのように進めたらいいのか、などについて連載形式で解説します。著者は新経営サービスの田中宏明氏。
前回(連載の初回)は、裁量労働制の内容と運用の実態について紹介しました。続く第2回は、裁量労働制が適している業務や職場について説明します。
裁量労働制を導入していない場合はその是非について、既に導入している場合は見直しの必要性について、判断材料にしていただければと思います。なお、裁量労働制には専門業務型と企画業務型がありますが、本稿は両方に当てはまるであろう内容となりますので、区別はしません。
裁量労働制の考え方とメリット
まずは、裁量労働制の適・不適を議論するに先立ち、裁量労働制の考え方とメリットを確認します。あらためてですが、裁量労働制とは、実際の労働時間の長短に関わらず労使で取り決めた時間数だけ勤務したと見なす制度です。
その前提として、仕事の進め方や時間配分などは、会社や上長が具体的に指示するのではなく労働者の裁量に委ねる、という点が重要です。成果創出に向けたプロセスを主に労働者側が決められるので、個人のスタイルに沿った働き方を実現したり、持てる能力を最大限に発揮したり、あるいは労働時間そのものを削減できるメリットがあります。
これらのメリットは前回紹介した、2019年に厚生労働省が発表した裁量労働制実態調査の結果からも確認できます。
労働者の実に半数近くが「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワークライフバランスが実現できる」「自分の能力を発揮しやすい」「効率的に働くことで、労働時間を減らすことができる」と回答していました。
また、裁量労働制を導入して「効果があった」と回答した企業に、導入理由を聞いたところ、「労働者の柔軟な働き方を後押しするため」「労働者の能力発揮を促すため」「労働者の長時間労働(時間外労働)を削減するため」が7〜9割にも上っていました。
仕事の進め方、時間配分の裁量があるか?
であるならば、仕事の進め方、時間配分について、社員が実際どの程度の裁量を確保できる業務・職場なのか──ということが、裁量労働制との親和性を大きく左右します。
言い換えると、成果創出に向けた仕事を、社員自身の好きな時間に、好きなやり方で進められるのか、ということです。社員の側に時間や進め方を決める余地がほとんどない業務や職場であれば、そもそもの前提に沿わず、メリットを享受できない点で裁量労働制はあまり適していません。そのような場合、裁量労働制を導入・継続してしまうと、社員から会社の労務管理について不信感を抱かれたり、あるいはコンプライアンス上のリスクなどが生じたりするため、避けた方がよいでしょう。
では、仕事の進め方や時間配分に関する社員の裁量において、重要な要素はどのようなものでしょうか。さまざまな意見があるとは思いますが、筆者が考えているのは次の3点です。
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