牛乳瓶のフタが2000個も売れた! 「1960年代のデザイン」に迫ってみた:週末に「へえ」な話(2/4 ページ)
牛乳瓶のフタをカプセルトイで販売したところ、売れに売れていることをご存じだろうか。カプセルの中にはアタリのような形で「1960年代のフタ」が入っているわけだが、そのデザインをよーく見ると、気になることがいくつか出てきた。どういうことかというと……。
紙が増えて、瓶が減って
小学校の給食で出される牛乳を見ると、容器は「紙パック」が増えているように感じる。瓶がどのくらい減って、紙がどのくらい増えているのだろうか。『読売新聞』(2021年7月15日)の記事には、このようなことが書かれていた。
「農林水産省などによると、給食用牛乳の容器は1970年度には89%が瓶だった。しかし、乳業メーカーが本格的に紙パック牛乳の製造を始めて以降、給食でも普及し、80年代に逆転。2019年度は紙パックが85%、瓶は15%になった。すでに給食から瓶牛乳が姿を消したのは、19年度で北海道や京都など27道府県に上る」と。
ふむふむ。筆者の想定以上に「瓶→紙」への移行が進んでいるようだが、容器の生産量はどうなっているのだろうか。農林水産省のデータを見ると、その差は歴然である。容器別のシェアを見ると、2007年は紙が90.9%、瓶は9.1%だったのに対し、20年は紙が96.1%で、瓶はわずか3.9%。牛乳瓶とフタは“運命共同体”である。このままガラスの瓶の減っていけば、この世から(少なくとも日本から)フタが消えてしまうのかもしれないのだ。
それにしても、なぜ瓶に入った牛乳は減少しているのだろうか。大きな理由が2つある。消費者目線で見ると、やはり「重さ」がネックになっている。スーパーやコンビニなどで瓶に入った牛乳を買うと、大変である。紙の容器よりも重いので、家に持って帰るのが正直ツライ。「いやいや、瓶のほうがおいしく感じるから、オレはガラスの容器を止めないぜ」という気持ちも分からなくはない。しかし、この問題は、紙パックの牛乳をガラスのコップに注げば、ほぼ解決される。
あと、落として割れてしまうと、後始末が面倒である。こうしたことを考えると、手軽な紙パック派が増えて、“瓶離れ”に歯止めがかからないのは仕方がないのかもしれない。
一方、供給サイドから見ると、「コスト」が大きく関係している。紙と瓶の価格にどのくらいの差があるのかというと、「10倍ほど違う」(山村さん)。この数字を目にしただけで、「あー、それは仕方ないね。紙一択だよ」と思われたもしれないが、それだけではない。回収した瓶は洗浄しなければいけないので、その費用がかかる。「機械で洗って、はい、おしまい」といった世界ではなく、「異物が混入していないか」「瓶は割れていないか」など人の目でチェックしなければいけない。
人件費だけでなく、機械のメンテナンス費も忘れてはいけない。老朽化すれば部品を交換しなければいけないわけだが、当然そこにも費用がかかってくる。「瓶→紙」への移行が進んでしまうと、機械をつくる会社が少なくなって、部品が手に入らないといったケースが出ているのだ。ちなみに、21年には小岩井乳業と酪王乳業の2社が、瓶の製造を中止している。
となると、「山村乳業は大丈夫なの?」「瓶から撤退するのは時間の問題なのでは?」などと想像してしまうが、同社が扱っている瓶製品は14品目47種類もあって、この数字は国内最大規模である(同社調べ)。「日常生活を送るうえで、瓶を扱うのは大変かもしれませんが、『やはり牛乳は瓶で飲みたい』という声は多く、今後も瓶入りの製品は扱っていきます」(山村さん)とのこと。
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