赤字ローカル線存廃問題 「輸送密度」だけで足切りするな:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/8 ページ)
地方ローカル線は、従前からの過疎化と少子化に加えて、疫病感染対策の長期化で危機的状況にある。特に輸送密度2000人未満の線区が課題とされるが、そもそも民間企業が赤字事業から撤退できないという枠組みがおかしい。公共交通は応益主義であるべきだ。そこで存廃問題で使われる「輸送密度」について考える。
地方ローカル線は、従前からの過疎化、少子化の傾向に加えて、疫病感染対策の長期化で危機的状況にある。そこで国土交通省は「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」を開催した。2022年2月14日に第1回、3月3日に第2回が開催された。
第1回の検討会を受けて、JR西日本は2月16日の社長会見の最後に「ローカル線に関する課題認識」として「鉄道特性を発揮できていない、特に輸送密度2000人未満の線区が課題」と、具体的な要対策路線の基準を掲げた。
この2000人(正しい単位表記は人/日)という数は、JR北海道が16年に表明した「自社単独では維持できない線区」と一致する。
JR西日本はかねてより、中国地方のローカル鉄道維持には消極的だった。18年の三江線の廃止はその意思表明であるかのようだ。その後もJR西日本社長はローカル線見直しにたびたび触れている。
21年12月の朝日新聞単独インタビュー記事「JR西社長 輸送密度2千人以下は非効率 路線見直しに目安(リンク)」では疫病による乗客減によって新幹線と都市の鉄道の利益が減り、いままでのようにローカル線の維持費用を捻出できないと語った。
そもそも、民間企業が赤字事業から撤退できないという枠組みがおかしい。公共交通は応益主義であるべきだ。それはともかく、今回は存廃問題で使われる「輸送密度」について考えたい。
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