ウクライナが日本に求めるSAR衛星データとは? 雲に覆われた地表も丸裸にする技術に迫る:宇宙ベンチャーSynspectiveに聞く(2/3 ページ)
ウクライナがロシア軍の動向把握を目的に、日本に人工衛星のデータ提供を求めていることが分かった。日本に要請したとされるのが、夜間や悪天候でも地表を観測できる「合成開口レーダー(SAR)」という技術を生かした衛星データだが、一体、どのような技術なのだろうか。
地盤沈下の度合いをミリ単位で把握できる
シンスペクティブのSAR衛星は、マイクロ波の1つであるXバンドという周波数を採用。観測モードは、ストリップマップモードとスライディングスポットライトモードの2つがあり、1メートル四方の構造物まで捉えることができる。この衛星データに、IoTデータなどを組み合わせることで、より詳細に構造物を捉えることも可能だという。
シンスペクティブでは、SAR衛星でデータを取得するだけでなく、取得したデータをデータサイエンスや機械学習を用いて解析し、顧客の要望に合わせて提供するサービスも手掛けている。
その1つが「地盤変動モニタリングソリューション」だ。
このサービスでは、SAR衛星データを用いて広域の地盤変動を解析。シンスペクティブが独自開発した解析技術により、地盤沈下の進行具合をミリメートル単位で測定し、時系列で表示することができるという。
この画像は、大阪湾に浮かぶ関西国際空港の地盤沈下具合をモニタリングしている様子を表した画面だ。赤く色づいている部分が地盤沈下が進んでいることを表している。モニタリングを通して、大規模地下工事のリスク管理などに役立てられるという。
こうしたシンスペクティブのサービスの主な顧客は、インフラ開発に関わる建設コンサルタントやデベロッパー、ゼネコン、損害保険会社など、多岐に渡る。
このように構造物を立体的に観測するSAR衛星は、継続して活用することで、地形などが変形していく過程を捉えることに適するという。大規模災害による土砂崩れや、道路陥没などの被害がどこで発生したかも的確に把握できるようになる。
確かにこの解像度であれば、ウクライナがデータ提供を求めるのも理解できる。ロシア軍の戦車がどこまで侵攻し、1日あたりでどれくらいの距離を進んだかも把握できそうだ。
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