ウクライナが日本に求めるSAR衛星データとは? 雲に覆われた地表も丸裸にする技術に迫る:宇宙ベンチャーSynspectiveに聞く(3/3 ページ)
ウクライナがロシア軍の動向把握を目的に、日本に人工衛星のデータ提供を求めていることが分かった。日本に要請したとされるのが、夜間や悪天候でも地表を観測できる「合成開口レーダー(SAR)」という技術を生かした衛星データだが、一体、どのような技術なのだろうか。
地球上のあらゆる災害も2時間以内で観測可能に
SAR技術はもともと、軍事利用目的で1960年代に発達した技術だ。米軍による国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者の偵察にも、SAR技術を搭載した航空機が用いられたとされる。
その後、民間にも転用され、日本ではNECが強みを持つほか、近年では小型化の開発も進み、シンスペクティブやQPS研究所(福岡県福岡市)といった新興の宇宙ベンチャー企業が台頭。防災やインフラ点検などの分野で活用が進んでいる。とはいえ、世界的にはSAR衛星の数はまだまだ少ないのが現状だという。
今回、取材したシンスペクティブは、18年2月に設立された宇宙ベンチャーで、SAR衛星の小型化に高い技術を持つ。
20年12月に打ち上げに成功した同社最初の小型SAR衛星「StriX-α(ストリクス・アルファ)」は、質量が従来の大型SAR衛星(約1230キログラム)の10分の1となる100キログラム級。開発コストも従来(200億円以上)の20分の1にあたる10億円以下に抑えることに成功した。
21年2月には、この小型SAR衛星で地表の画像データ取得にも成功。質量100キログラム級の小型SAR衛星による地表データの取得は、同社が日本初の快挙となった。
3月1日には、2基目となる「StriX-β(ストリクス・ベータ)」の打ち上げに成功。今後、20年代後半までに、打ち上げる衛星数を30基に増やし、地球全体をカバーして高頻度で観測できる体制を目指すという。30基体制が実現すれば、地球上のあらゆる場所で発生した災害も、2時間以内に観測が可能になるという。
シンスペクティブの熊崎勝彦さんは、「ロシアのウクライナ侵攻という思わぬ形でSAR衛星にも注目が集まるが、われわれとしては、防災などに役立ててもらうなど、持続可能な社会の実現を目指して今後もサービスを展開していきたい」と話した。
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