旅行会社は苦戦しているのに、なぜ一休の取扱高は「微増」だったのか:週末に「へえ」な話(2/5 ページ)
新型コロナの影響を受けて、旅行会社は軒並みダメージを受けている。そんな中で、宿泊施設の予約サイトを運営する「一休」の取扱高を見ると、少し伸びているのだ。旅行をする人が大幅に減少したのに、なぜ同社は伸ばすことができたのか。その秘密に迫ってみると、「猫パンチ」がでてきて……。
キャンセルの日々
では、どうやって伸ばすことができたのだろうか。いや、最初の緊急事態宣言が発出されたときは、さすがに大変だったようだ。キャンセル、キャンセル、キャンセルの日々――。「旅行、行けないよ。無理」といった連絡が相次いだので、社内からはこのような声があった。「このままでは売り上げがゼロになるのではないか」と。この懸念は間違っていなくて、冒頭でもご紹介したように旅行会社の多くは、キャンセル地獄に陥っていたのだ。
売り上げゼロ、赤字の足音が近づいてくる中で、一休はどのような手を打ったのだろうか。第二宿泊事業本部の宮岡雄一さんに聞いたところ「この宿泊施設はこのような感染対策をしていますよ。Go To トラベルが始まる前に、Go Toはこのような仕組みになっていますよ。Webサイト上に、こうした情報をできるだけ早く更新したことが大きかったですね」とのこと。
この話を聞いたとき、正直に言うと「は? それだけ?」と思ったのだ(顔には出ていない。たぶん)。しかし、よーく考えると、当時レストランを予約するときに困ったことがあった。グルメサイトを見ながら「どこにしようかな。焼肉がいいかな? それとも中華かな?」と思って探していると、店によっては情報が更新されていないことが分かってきた。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を受けて、一時的に閉店している店が多かったわけだが、コロナ前の情報がびたーっと張り付いたままだったのだ。
店、やっているのかな? 営業時間は短縮されているのかな? 情報が更新されていないようなのでよく分からないところについては、先方に電話をして「今日、やってますか?」と確認の連絡をしたことが一度や二度あった。そのとき「面倒だなあ」と思ったわけだが、情報がきちんと更新されていると、いちいち連絡をしなくてもいいので、便利は便利であった。というわけで、消費者の目線に立てば、サイト上の情報を更新することはとても大切なことである。
もう1つのGo To トラベルの情報についてはどうか。初めてのキャンペーンだったので、どのようにすれば申し込むことができるのか、よく分からない人が多かったはず。そうした状況の中で、一休はなる早でサイトに情報を掲載したので、それを見て、そのまま宿泊施設を予約した人も多かったようだ。スピーディーに対応したことで、いわゆる“先行者利益”を手にすることができたのかもしれない。
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