旅行会社は苦戦しているのに、なぜ一休の取扱高は「微増」だったのか:週末に「へえ」な話(4/5 ページ)
新型コロナの影響を受けて、旅行会社は軒並みダメージを受けている。そんな中で、宿泊施設の予約サイトを運営する「一休」の取扱高を見ると、少し伸びているのだ。旅行をする人が大幅に減少したのに、なぜ同社は伸ばすことができたのか。その秘密に迫ってみると、「猫パンチ」がでてきて……。
猫パンチ作戦
では、具体的にどんなことをしているのだろうか。さまざまなことに取り組んでいる中で、個人的に気になったのは、メルマガである。同社はメルマガ会員を1300万人ほど抱えていて、1日に数百種類も送っているそうだ。毎日たくさんのメルマガを送るのではなく、ここでの考え方は「パーソナライズ」である。
例えば、Cさんは「熱海に行きたい」と思って、一休のサイトで現地のことを調べたとしよう。宿泊費用は安くないし、また、旅行は楽しみたいので失敗はしたくない。リアル店舗の旅行会社や他のOTAで、もっといいプランがあるのかもしれない。このように考えて、宿泊先を「即決」するのではなく、数日“寝かせる”人が多いようだ。こうしたケースを想定して、一休はヒトヤスミしてメルマガを送るようにしているという。
つまり、ユーザーに考える時間を提供して、“そろそろ”というタイミングでメルマガを送るのだ。Cさんは熱海の露天風呂付きを希望していて、そのとき人気ランキングで1位、3位、5位の宿泊施設を見ていた場合、どういった内容のメルマガを送るのだろうか。数日後、2位、4位、6位の情報を送っているそうだ。
こ、こ、細かい。先ほど触れたように、基本的な考え方は「パーソナライズ」なので、1300万人に同じメルマガを送ることはほぼないという。むしろ、同じ内容を数十人しか送らないことも珍しくないそうだ。
このほかにもファンを増やすために、あの手この手を打っている。トップページの内容を人によって変えていたり、画像も違っていたり、営業の担当者が宿泊施設に足を運んで人気のプランを一緒になって考えたり。
「これをやれば正解! ファンは絶対に増える!」といった秘奥義があるわけではなく、あれもやって、これもやって、それもやって、とにかくさまざまなことをやるのだ。こうした取り組みについて、同社の榊淳社長は「猫パンチ作戦」と呼んでいるという。猫が前足の肉球を使って、動物やモノなどを素早く何度も叩くアレである。猫パンチの動きをイメージして、命名した作戦だ。
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