サントリー「BOSS」の“おじさん”は誰? 人によって印象が違う表情の秘密:ロングセラーの挑戦(4/4 ページ)
サントリー食品インターナショナルが展開する「BOSS」が今年発売30周年を迎える。商品ラインアップは、海外商品も含め108。なぜそれほどまでにラインアップを拡大したのだろうか。
「働く人の相棒」であるためにはどうすべきか
もちろん、変化を続けたことで「見えてきたこともあった」と大塚氏。そもそも「相棒」とは、江戸時代の駕籠(かご)の棒に由来するという。2人1組で棒の端と端を担ぐことから、その相手を「相棒」と呼んだそうだ。
「社内で一度、『相棒とはいえ、たまには船頭として引っ張ることも必要ではないか』と議論をしたことがあります。そうしたら上司から『一歩前や半歩前に出て人を引っ張るのはボスではない』と言われました」(大塚氏)
一時期、BOSSからエナジードリンクを発売したことがあった(現在は製造終了)。「働くときにちょっと違ったパワーが欲しいことはあるが、“BOSSのおじさん”にそうして欲しいワケではなかったんだな。相棒は前に出て、強い力で引っ張ってはいけないということにもつながっているかもしれません」(大塚氏)
新型コロナウイルスの影響を大きく受け、発売以降初めて前年販売数を下回った20年。21年は引き続きコロナ禍の影響を受けながらも、販売実績は前年比103%となる1億590万ケースを記録(出荷実績ベース)。飲料市場全体の伸び(同101%)を上回り、再成長の兆しを見せている。
「このご時世に相棒としての役割は一言で言い表せず、いろいろな価値観が錯綜する数年間でした。“変えること”を目的化するワケではなく、相棒であり続けるために世の中の空気感やお客さまの変化にどう寄り添っていくのか。それこそが重要だと考えています」(大塚氏)
一見非効率な108もの商品数は、働く人に寄り添う“ぶれない軸”を示す数字だった。改めてBOSSを手に取ってみる。今日の“ボス”はどんな顔をしているだろうか……。
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