サントリー「BOSS」の“おじさん”は誰? 人によって印象が違う表情の秘密:ロングセラーの挑戦(3/4 ページ)
サントリー食品インターナショナルが展開する「BOSS」が今年発売30周年を迎える。商品ラインアップは、海外商品も含め108。なぜそれほどまでにラインアップを拡大したのだろうか。
パイプをくわえた男性の正体は?
BOSSといえば、パイプをくわえた男性のロゴが象徴的だ。ダンディなあの“おじさん”は一体何者なのか? 実は、あの男性にはモデルが存在しない。飲む人がそれぞれイメージする“ボス”になれるようにしているという。
「ロゴの男性がどこの誰と決めてしまえば、その働き方に共感できない人が出てきてしまいます。缶コーヒーが叱咤激励するモノという定義から、ひとりで飲んだ時に、語りかけたり語りかけられたりする“相棒”と感じられるブランドを意識しています。見る人によって、厳しそうにも優しそうにも見える絶妙な表情を作り上げたのがこの顔です」(大塚氏)
もうひとつ、BOSSブランドで印象的なのは展開する商品数の多さだろう。先述した通り、現在展開している商品は108、これまでに発売した累計商品数は500を超える。
ブランドイメージの構築を考えると、パッケージデザインや味の方向性を統一していくのが一般的に感じる。500商品以上もの展開は、ブランドを展開する上で非効率ではないのだろうか。
大塚氏は「マーケティングの理論からすると多分相当外れてると思う」と話す一方、「働く人に寄り添ってきた結果」だと振り返る。「働くスタイルや休み方は人によってさまざま。働く人の喜怒哀楽に寄り添うためには、味もいろいろあっていいと考えています」
嗜好の多様化に対応するため、02年にブランドリニューアルを実施。「運転するボス」や「新聞を読むボス」など、多彩な顔づくりにも挑戦した。また、シアトル系カフェのトレンドを受け、深入りをコンセプトとした商品開発を進めた。
容器の形状も変化させてきた。08年には缶にキャップが付いたボトル缶入り商品を発売、17年にはペットボトル入りの「クラフトボス」シリーズの展開を開始した。
クラフトボスシリーズは、ブランドの成長エンジンとなり、21年には累計販売本数が30億本を突破。コーヒーやカフェラテだけではなく、紅茶シリーズや抹茶ラテといったコーヒー以外の商品も展開している。大塚氏はこれらの商品も「働く人の相棒であり続けるための変化」だと話す。
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