レトルト食品界の王様「ボンカレー」 技術革新を重ねても唯一、”変えなかったこと”は?:レトルト大好き! K記者がフカぼった(1/3 ページ)
われわれの生活に欠かせない「レトルト食品」。1968年、大塚食品が世界で初めて市販用レトルト食品「ボンカレー」を開発したことからその歴史は始まった。レトルト食品が”当たり前”になるまで、どのような技術革新があったのか? また、数多のアップデートを重ねても唯一、変わらなかったこととは?
連載:レトルト大好き! K記者がフカぼった
普段、何気なく口にしているレトルト食品。消費者の手元に届くまで、さまざまな技術革新や黒子企業の活躍に支えられてきた。コロナ禍でより身近になったレトルト食品のヒミツを発掘していく。
コロナ禍で、レトルト食品には大変お世話になった。総務省統計局の調査によると、2020年のレトルト食品国際生産量は38万8746トン(前年比1.4%増)と4年連続で過去最高を記録した。品目別では、カレー、食肉野菜混合煮(どんぶりの素)、つゆ・たれが過去最高の生産数を更新した。
われわれの生活に欠かせない存在となったレトルト食品。実は、日本発祥というのをご存じだろうか。1968年、大塚食品が世界で初めて市販用レトルト食品「ボンカレー」を開発したことから歴史が始まる。今では当たり前のようにスーパーの棚に並んでいるが、この光景が「当たり前」になるまでにいくつもの技術革新があった。
米国のパッケージ専門誌がヒントに
1964年にカレー粉や即席カレールーのメーカーを傘下に置いたことがきっかけで、大塚食品はレトルト食品の開発に乗り出すことになる。しかし、当時から市場の競争は激しかった。類似商品を出したところで、生き残ってはいけない。
打開策を考える中で、たまたま米国のパッケージ専門誌で「ソーセージの真空パック」を目にした。缶詰に代わる軍の携帯食として、お湯で温めるだけで食べられるソーセージとして紹介されていたのだ。
「この技術とカレーを組み合わせたら、お湯で温めるだけで簡単にカレーが食べられるようになるかもしれない」と考え、すぐに商品開発が始まった。しかし、世界初のチャレンジだ。そう簡単にはいかない。
まず、大塚グループが長年培ってきた点滴液の殺菌技術を応用して、レトルト釜を自分たちでつくってみた。カレーを入れたパウチをレトルト釜に入れ、食材内に含まれる微生物を殺菌するために高温処理をしたところ、中身が膨らみ破裂したという。
破裂を防ぐための圧力をかけるが、温度と圧力の兼ね合いやパウチの耐久性、強度など複数の要素が絡み合い、開発は難航した。ポリエチレン樹脂とポリエステル樹脂の2層構造を採用したパウチを開発したことで、ようやく光が見え始める。十分な強度が保てたと思ったら、輸送途中にパウチに穴が空くなどトラブルが続いた。
構想から4年がたち、1968年にやっと完成。しかし、1年ほどは販売拠点を阪神地区に限定していた。使用していたパウチは半透明だったため、どうしても光や酸素に触れてしまい、風味を保つことができず、遠方への輸送が難しかったのだ。賞味期限も夏場は2カ月、冬場は3カ月と、現在(13〜25カ月)と比較してかなり短かった。
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