今後はメタバースが主流? 総務は今、多様化するコミュニケーションツールをどう使いこなすべきか:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
総務領域の第一人者・豊田健一氏の連載。今回は、長引くコロナ禍で多くの企業がなかなか解決策を見つけられていない「コミュニケーション問題」について、総務の視点から解説する。
そもそも、自分と全く同じ人間はこの世に存在しない。だとしたら、コミュニケーションする際、常に相手との相違を意識しなければならないはずだ。先に記した、経営トップが社員にメッセージを発信する際、どうしても経営トップ目線になってしまう。経営トップと社員では見ている世界が大きく異なる。考えていること、問題意識も全く異なる。持っている情報、触れている情報に歴然たる相違がある。
総務部門に目を移すと、メンバーは経営の中枢部門であることも多いはず。そこでは、毎日のように高度な情報がやりとりされ、また、経営層とも日常的に接している。一方、現場の社員は目の前の仕事に忙殺され、その仕事を対応するのに必要な情報にしか触れていな場合も少なくない。
そう考えると、総務発のコミュニケーションが、広く社員に共感されることは、なかなか難しいのではないだろうか。そもそもの問題意識が異なり、見ている世界が違えば、何か情報を発信しても、社員に自分事として捉えられることはないだろう。自と他の関係性をしっかり認知できていない限り、当事者意識を持って共感することはあり得ない。結果、コミュニケーションを取ろうとする者の意図に沿った行動を、コミュニケーションの相手がとることはないのだ。
コミュニケーションツールの使いこなしは?
さて、コミュニケーションについて大事な点を理解できたところで、多様化が著しいコミュニケーションツールをどう使いこなすか、という課題を考えてみよう。
まず重要なのは、同期か非同期か、という点。同じタイミングでコミュニケーションしたいのか、メールやチャットのように、時間差によるコミュニケーションでもよいのか。
同期的なコミュニケーションをしたいとなると、リアル、電話、オンライン会議、バーチャルオフィス、メタバース――という選択肢がある。この中で、同じ場所にいるのであれば、リアルでのコミュニケーションで全てが完結する。問題となるのは、離れている場合の選択である。
社内コミュニケーションの場合は、バーチャルオフィスがおすすめだ。相手の存在を認知しつつ、雑談もできるので、わざわざオンライン会議を設定する手間もない。もちろん、しっかりと会議をしたいのであればオンライン会議を行う。さらに、バーチャルであってもリアリティーを感じながら、熱量を持って思いを伝えたい、臨場感や没入感のあるコミュニケーションをしたいのであれば、VRメタバースでのコミュニケーションをしてみるとよいだろう。
アバターだと、リアルの表情が読み取れずに不安になる、という意見もある。ただ、声を変換しなければ、その人そのままの声であるし、動作、ボディーランゲージもそのまま表現される。相手が理解しているのか、していないのか。そして賛成なのか、腹落ちしていないのかは、声と動きで把握できるはずだ。
ただ、現状はVRに必要な機材がまだ大きく、長時間使っていると疲れるし、VR酔いという状態もある。今後技術が進歩し、機材が小さくなり、物理的な負担感がなくなってきたら、バーチャルでのコミュニケーションはどんどんVRに取って代わられるのではないだろうかと筆者は見ている。
VRメタバースが普及するまでは、もう少し時間がかかるかもしれないが、いずれにせよ、その時代はもうすぐに違いない。総務部門としては、普及してから手を付けるのではなく、アーリーアダプターとして、すぐにでも体験しておいた方がよいだろう。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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