浅草で142年続く「すき焼き店」を事業承継 老舗が決断に至った背景とは?:コロナ禍で閉店(1/6 ページ)
外食事業会社WDI GROUPは、創業142年を誇る浅草のすき焼き店「ちんや」の暖簾(のれん)を承継した。新型コロナウイルスの余波が経営を直撃し、21年8月に閉店を余儀なくされた。しかし、伝統あるすき焼き文化を絶やしてはいけないとWDIが事業を受け継ぎ、場所を移転して再オープンすることとなったのだ。
ハードロックカフェ、カプリチョーザ、サラベスなど、25以上のレストランブランドを国内外で展開している外食事業会社WDI GROUP(東京都港区、以下WDI)は、創業142年を誇る浅草のすき焼き店「ちんや」の暖簾(のれん)を承継した。
3月に江戸通り沿いへ移転し、「浅草本店」として再オープンさせている。再出発にあたりWDIの清水謙社長と、ちんやの住吉史彦六代目に話を聞いた。
現在、浅草のすき焼き店として親しまれている「ちんや」はもともと、江戸時代に諸大名などにペットとして日本原産の愛玩犬「狆(ちん)」などを納めていたほか、獣医・ブリーダーも兼ねていた。その時に使用していた屋号「狆屋」に由来している。
1880年(明治13年)に料理店に転じたものの同じ屋号を使い、1903年(明治36年)にすき焼きの専門店となった。また、店舗には精肉売店も擁していて、すき焼きに使用している黒毛和種の雌の牛肉に限定して販売していた。
2017年には「適サシ肉」を宣言し、A5等級の使用をやめたほか、適サシ肉を商標登録するなど、すき焼き文化の醸成に努めてきた歴史がある。
ところが、日本でも20年に広がり始めた新型コロナウイルスの余波が経営を直撃し、21年8月に閉店を余儀なくされた。しかし、伝統あるすき焼き文化を絶やしてはいけないとWDIが事業を受け継ぎ、場所を移転して再オープンすることとなったのだ。
閉店から再開への経緯
今回、WDIは事業承継に主眼を置いて運営するとしている。住吉六代目は事業承継に至った経緯を語る。
「買収ですと、元のオーナーは顔も口も出さないケースもありがちだと思います。ですが、味であったり、元のお客さまにも引き続き使ってもらったり、かつ地元の浅草の方々にも使ってもらったりしたいので、WDIさんの方から『一緒にやってほしい』と、これまで受けてきた提案とは異なる話をいただきました。WDIさんのことも調べてみましたし、実際に清水社長と話してみて、肌感覚といいますか、この人なら大丈夫だと思えました。経営理念などにも似ているところがあって、お願いすることにしました」
21年8月に閉店した理由を聞くと「経営全体の話として、建物は築47年で外観はいいのですが、内部はかなり老朽化していて、必ずどこかが故障しているような状況でした。その中で、建て替えをするプランが描けないのと、新型コロナが加わって閉店を決断したということです。また、後継者もいなかった点もあります」と複雑な状況が絡み合ってのことだと話す。
「こういうこと(閉店)になるんだろうなということは、20年夏ごろにはイメージしていました」と付け加えた。それは夏にエアコンが壊れ、部品の関係で修理業者から直るまでには1カ月かかるといわれたことがきっかけだったという(幸いにも実際には1週間で直った)。
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