浅草で142年続く「すき焼き店」を事業承継 老舗が決断に至った背景とは?:コロナ禍で閉店(2/6 ページ)
外食事業会社WDI GROUPは、創業142年を誇る浅草のすき焼き店「ちんや」の暖簾(のれん)を承継した。新型コロナウイルスの余波が経営を直撃し、21年8月に閉店を余儀なくされた。しかし、伝統あるすき焼き文化を絶やしてはいけないとWDIが事業を受け継ぎ、場所を移転して再オープンすることとなったのだ。
背景には慶応義塾大学の三田会
その後、21年5月に閉店を発表し、8月に公式に店を閉じた。これに当たり、住吉氏は、店という不動産や暖簾について、今後の扱いを知り合いのコンサルタントに相談したという。その人を介してWDIの清水社長を紹介された。
清水社長は「吉野家の河村泰貴社長と仲がよく、以前、河村社長がプライベートでちんやに連れてきてくれたことはありました」と話す。
事業承継の話をもらったとき、伝統が決断に関して重くのしかかったことを吐露する。
「びっくりしました。創業140年を超える老舗を引き受けられるかどうか悩みましたね。閉店する前の21年6月末に住吉さんと初めてお会いして、その後いろいろと話をしていく中で『老舗って何ですか?』という質問をしたのです。すると住吉さんは『問い直しだ』と答えてくれました。
同じものを守っているだけでは息絶えてしまいますが、時代の流れを読みながら変えるべきものは変える、変えてはいけないものは変えないということを話してくれました。それならWDIもできるかなと思いチャレンジすることにしました」
この仲介役を果たした知人と住吉6代目、清水社長の共通点。それは慶應義塾大学の三田会だ。清水社長は「要は住吉さんが、私という慶應の後輩に任せたということです(笑)」と冗談めかしたが、「話してみると、最初から目線や価値観が同じですので、安心感があったのは事実です」と、住吉六代目は話す。
スムーズな承継の背景には、日本経済界で影響力を持つ三田会のつながりの強さもあったのだ。
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