2015年7月27日以前の記事
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なぜ高級車はFRレイアウトなのか? その独特の乗り味とは高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

マツダがFRの新しいラージ群プラットフォームを採用したSUV、CX-60を発表した。「時代に逆行している」という意見と共に、登場を歓迎するコメントも少なくなく、セダンに対する期待も溢れている。では、今回のポイントの1つであるFRとはいったい何なのだろうか?

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優雅でゆとりある動きはFRならではの素性の良さ

 FRのメリットの1つは、FFに比べて前後の重量配分を均等化しやすいことだと一般的にいわれている。しかしそれは電動4WDが普及している現在では、最早メリットと呼べるものではない。では、FRのメリットとは何だろう。

 前述の反力に関してだけでもFRは有利だ。縦置きエンジンと変速機が作る駆動力を、デファレンシャルギアで90度向きを変換してドライブシャフトに伝えることでリアタイヤを駆動しているため、反力の大半はリアデフケース回りに掛かることになるのだ。

 もちろん駆動力が変換されるように、反力も向きを変えて変換される部分もあるが、全ての反力がパワーユニットに伝えられるわけではなく、分散される。FRでは反力への対策は非常に控えめで済む。

 アウディがFFでも縦置きにこだわった理由はここにもある。小型車では圧倒的に全長方向にコンパクトに仕上がる横置きではなく、縦置きのエンジンと変速機にすることで走行中の加減速に対して車体が安定方向にあることが利点だったのだ。

 後にフルタイム4WDを開発するためにも、この縦置きレイアウトは役立ったが、衝突安全性の確保もあってボディサイズに余裕があったことから横置きにしてコンパクトにする必要がなかったのだ。

 そして加減速での車体の落ち着きだけでなく、走行中の安定感を高めてくれる効果もFRというレイアウトの魅力になっている。

 エンジンのクランクシャフトや変速機のインプットシャフト、カウンターシャフト、メインシャフト、そしてプロペラシャフトといった車体の中心を貫く大きなシャフトが、走行中に回転することで発生するジャイロ効果により、車体の安定性が高まるのである。

 車体が大きくシャフトのサイズも大きいクルマほど、安定感へ貢献することになる。それゆえ、大型高級車において走りの質感をこれ以上ないほどに高めるには、FRレイアウトを基本とすることが理に適っているのである。


最新のメルセデス・ベンツSクラスのパワートレイン。先進の安全装備やインフォテイメントを駆使して快適性もこの上ない高級車として仕立てられているが、シャーシレイアウトはFRを踏襲している

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