倒産危機の新興家電シロカ、買い取りから2年で売上高71億円の新社長の手腕:家電メーカー進化論(3/9 ページ)
製品のリコール費用などで19年に債務超過に陥ったシロカは、2000年に誕生した調理家電を中心に取り扱う白物家電メーカー。現在は新しい経営体制とファンドによる支援により、新生シロカとして再生。旧体制からわずか2年で、売上高を71億にまでアップさせた背景を、金井まり新社長と開発陣に聞いた。
中国の生産工場から家電メーカーへ
新生シロカの代表となった金井氏は、もともと個人で食品輸入の商社を経営する傍ら、扇風機や加湿器などの空調家電を手掛ける台湾のODMメーカーで15年以上、副総経理(副社長)として日本向けを含む海外販売向け家電の製品企画や品質管理などを担当していた。
「当時、仕事の関係者から『こういう会社があって、製品回収の経験がないようなので助けてあげてくれないか』と声をかけられて、回収の手伝いに来たのが最初でした」(金井氏)
リコールの支援時にシロカの内情を知った金井氏は、会社の売却先を探しているという話を聞く。金井氏の顧問先のメーカーを紹介するといった考えもあったが、大企業の傘下では、個性的なメンバーを生かした成長は難しいと考えた。
「当時のシロカについて、いろいろな方に相談したところ『自分でやってみたら?』というお声をいただきまして、ファンドと一緒に会社を買い取ることにしました。
実は、以前から個人的にかまどさん電気を使っていて、炊き上がったご飯の美味しさを知っていました。あまりご飯を食べない姪がこのご飯は食べるというのも、自分でやってみることにした理由です。
このように、ものづくりを大切にしている会社なら、もう一度立ち上がれるのじゃないかと考えました。あとは、会社が大変な時でも、社員みんなが一生懸命やっていたことも大きいですね」(金井氏)
社員と一緒にリコールに奔走するなかで、シロカの強みと弱みが見えたという金井氏。そこへ金井氏が20年以上培ってきた製品開発や製造、調達などのノウハウを組み合わせることで会社としてさらに成長できると考えたのだ。
そして金井氏はファンドと組み、シロカの経営権を買い取り、自ら経営に乗り出した。
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