格差が広がる日本 週休3日の“貴族”と、休みたくても休めない“労働者”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
「週休3日」に注目が集まっている。大企業が相次いでこうした先進的な制度を導入する陰で、休みたくても休めない労働者の存在が置き去りにされている。日本の働き方改革は、どこへ向かうのだろうか──。
個人的な見解を先に述べるなら、私は週休3日制には大賛成です。
大分県国東市にある、アキ工作社では、「せっかく、国東という豊かな自然のあるところにいるのに、大都会に合わせて、緩やかに流れる田舎時間を無駄するのはもったいない」と、一足早く給料据え置きの「週休3日制」を取り入れ、大成功! 仕事の効率が良くなり、一人一人の仕事に対する責任感が高まり、業績が前年比28%もアップしたのです。
科学的にも、「週50時間以上働くと労働生産性が下がり、63時間以上働くとむしろ仕事の成果が減る」ことが確認されています(「The Productivity of Working Hours」John Pencavel、2014年)。「睡眠時間が6時間未満では狭心症や心筋梗塞の有病率が上昇、5時間以下では脳・心臓疾患の発症率が上昇、4時間以下では冠動脈性心疾患による死亡率が、睡眠時間7時間以上8時間未満の人の約2倍になる」ことも分かっています(平成16年度版「厚生労働白書」)。
加えて、生産性の向上には「人材投資」が必要不可欠です。
特に、成人人口(20歳以上)の「10人に8人」が40代以上、50代以上に絞ると「10人に6人」といわれる今、働く人たちの「再教育」と両輪で進めない限り、生産性の向上は無理。なお、週休3日制を取り入れる前述の企業は、これらの視点にもプライオリティを置いているので大丈夫でしょう(おそらく、期待も込めて)。
むろん、男性の育休の取得率は、いまだに12.7%ですし、日本平均での有給休暇の取得率は56.6%しかありません(2020年、厚労省調べ)。どんないい制度も「使えてなんぼ」ですから、企業が「使える制度」にしないかぎり、週休3日制の効果も期待できません。
それでも「休む権利」にスポットが、やっと、本当にやっと当たり始めたことは率直にうれしい。企業には、ぜひとも知恵を絞って生産性向上につなげてほしいです。だって、人は「幸せになるため」に働いているのです。真の健康経営が、週休3日制により拡大していくことを心から願っています。
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