Web会議への移行で「気遣いレス」になっていませんか? 思い出したい茶道の格言「一座建立」:茶道に学ぶ接待・交渉術(1/3 ページ)
オンラインの時代です。これまでのビジネスの前例だけでは、カバーしきれなくなった時代とも申せましょう。そんな時代には、日本人が古くから狭い茶室で対面していた時にはどんな配慮が求められていたかを参照してみることにも、意味があるかと思います。
テレワークが一気に広まったコロナ禍の初期は、Web会議において不慣れな操作に追われ、参加者に気を配る余裕がなくても多少は許されたかもしれません。しかし、新たなスタンダードとして定着した今日(こんにち)では、こうした言い訳もそろそろ通用しなくなりつつあります。また、オンラインの時代になったからこそ、対面の会議をする場合には、今まで以上の配慮や成果が求められる側面もあるかもしれません。
これまでのビジネスの前例だけでは、カバーしきれなくなった時代とも申せましょう。そんな時代には、日本人が古くから狭い茶室で対面していた時にはどんな配慮が求められていたかを参照してみることにも、意味があるかと思います。
本記事では、現代のビジネスシーンでも応用できる、茶道に伝わる格言をご紹介します。接待や交渉の心得としてお役立てください。まずは会議や接待の場で生かせる「一座建立(いちざこんりゅう)」についてです。
会議や接待でまず意識したい「一座建立」
「急に茶席に参加させられるのですが何を注意すればいいですか」と聞かれたら、「一座建立」という言葉を伝えるようにしています。茶席に集う全員に気を配り、円滑に事を運ぶための教えで、会議や接待といった場でも十分に応用の利く言葉です。
千利休の時代からこの言葉は、武野紹鴎が初心者のために残したものと伝えられています。武野紹鴎については、本当に利休と師弟関係があったのかというと歴史的にいろいろと異論が出てきてはいますが、千利休の師匠筋としておけば間違いありません。
利休の高弟とも伝えられる同時代の茶人、山上宗二が記した『山上宗二記』には、「客人振りの事、大方、一座建立にあり」と記されています。『山上宗二記』には、その他、茶人に必要な心得を箇条書きにして伝えてくれています。茶席での客の心得として、「一座建立」にどういう意味を持たせているのか、他の条文を参考にしてみましょう。
知識ももちろん大事だが、話をスムーズに運ぶには配慮も必要
まずは、下記の条文を参考にしてみましょう。
万事に物のたしなみ、ならびに気遣い
茶席で「物のたしなみ」といえば、茶席を飾る道具を鑑賞できる予備知識のことです。「気遣い」とは、参加した客に対する配慮です。相手と話を合わせるには、同じ程度の予備知識があった方がスムーズであるというのは、茶席に限らない話でしょう。
しかし、宗二が初心者にはまず「一座建立」で大丈夫と教えるのは、「道具などの予備知識よりも、亭主に対して、またさらに一緒にお客さんとして招かれた人に配慮することが大切だ」と伝えたいのだと考えられます。
それは、高度な能力があっても、人間的に冷たい人とは付き合いをしたくないと思うのと同じことです。「なんだ、お前はそんなことも分からないのか」と上から目線で非難する人よりも、こちらの足りないところをさりげなくフォローしてミスを修正してくれる人の方が好まれるといえば、イメージしやすいでしょうか。
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