食欲が減退する「青色」なのに、なぜ「青い富士山カレー」は18万食も売れたのか:水曜日に「へえ」な話(5/5 ページ)
青色をした「青い富士山シリーズ」が売れていることをご存じだろうか。カレーもパンもチョコもビールもヒットしている。食欲を減退させる「青色」なのに、なぜ人気を集めているのか。その秘密を取材したところ……。
“奥行き”萌え
さて、その後はどうなったのだろうか。ビールを完成させるのには、時間がかかる。かといって、何もしないわけにはいかないので、ビール開発で培った知見を生かして、3カ月後に「青い富士山クリームソーダ」(540円)を発売する。
同時に、ビールの開発も進めていて、商品化の延期を発表してから、1年3カ月後に「青いビール〈生〉」(946円)が完成する。当初の方針を変えて、合成着色料を使うことにしたものの、発売1カ月で完売した。
それにしても、なぜ「青い富士山シリーズ」は人の心を引き寄せるのだろうか。先ほど紹介したように味の“ギャップ萌え”以外に、何かあるのかもしれない。「青色 お菓子」と検索すると、他社からさまざまな商品がでているが、何かが違う。それは、“奥行き”があるかないかである。
例えば、青い色をした板チョコがあるとしよう。しかし、それは「青くしただけ」とも言える。一方、富士山プロダクトが開発した商品は、「青色×富士山」がコンセプトになっているので、どれも“立体的”なのだ。写真を撮影したくなるだけでなく、じーっと見ていると、何か言いたくなる人もいるのではないだろうか。その場に、静岡と山梨の人がいれば、“答えのない論争”が繰り広げられるかもしれない。
静岡県民からは「静岡からの富士が『表富士』で、山梨側から見たものは『裏富士』。だからオレは、表から食べるぜ」といった発言があれば、山梨県民からは「お札に印刷されている美しい富士山って、山梨県側だよな。そもそもこのカレーも山梨発だぜ」といった反論があるのかも。
「青い富士山カレー」を目の前にして、こうした会話があるのかどうかは分からない。いや、カレーがなくても論争を繰り広げているだろうが、立体的な構造をしていることによって、これまでになかったコミュニケーションが生まれて、そのことによってファンの輪が広がっている可能性もある。
人気が出ている要因はもう1つあると思っていて、これだけはどうしても伝えなければいけない。競争の激しい市場のことを「レッドオーシャン」と呼んでいて、逆に競争相手が少ない(または、いない)未開拓市場のことを「ブルーオーシャン」と定義している。
勘のスルドイ読者であれば、もうお分かりだろう。青い富士山シリーズは、未開拓の市場に打って出たことが大きかったのである(筆者注:ダジャレではありません)。
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