食欲が減退する「青色」なのに、なぜ「青い富士山カレー」は18万食も売れたのか:水曜日に「へえ」な話(4/5 ページ)
青色をした「青い富士山シリーズ」が売れていることをご存じだろうか。カレーもパンもチョコもビールもヒットしている。食欲を減退させる「青色」なのに、なぜ人気を集めているのか。その秘密を取材したところ……。
落とし穴にハマった
観光施設での起爆剤として「青い富士山カレー」が生まれたわけだが、残念ながら施設の運営からは撤退することに。しかし、各方面からこんな声が届いた。「青い富士山カレーをウチで販売させてもらえないか」と。
生みの親としては、うれしい言葉である。しかし、生みの親だからこそ、手放したくない想いも強かった。19年4月に富士山プロダクトを立ち上げて、「青い富士山」シリーズにチカラを入れていくことを決めた。3カ月後に「青い富士山カレーパン」(500円)を発売。パッと見たところ、カレーパンの姿をしていないこともあって、「チョコミント系のパン?」といった声も多かった。
だが、しかしである。「青い富士山カレー」と同じ方程式がこちらでも生まれた。「どうせおいしくないでしょ」という先入観があるものの、食べてみると「あれ、おいしい」という意外性。この落差がウケて、売り上げが伸びていく。冒頭で紹介したように、20年には「カレーグランプリ」で大賞を手にするのだ。
このような話を聞くと、「めちゃくちゃ順調だなあ。失敗談とかはないの?」と思われたかもしれない。お待たせしました。次に、落とし穴にハマった話を紹介しよう。
20年10月のことである。二匹目のドジョウを手にしたこともあって、ことわざにはないが、三匹目のドジョウを狙っていたのである。商品はビールで、色は当然「青色」である。合成着色料ではなく、天然色素を使って、“いつもの色”を出そうとしていた。試行錯誤のうえ、なんとか完成させた。いや、正確に言うと、“完成していた”と思い込んでいたのである。
記者会見を開きメディアでも取り上げられ、あとは発売当日を待つだけ。店頭に商品が並ぶ1週間ほど前、関係者の間で「青い富士山ビールでお祝いをしよう」という話になった。気分よく瓶のフタを開けたところ、とんでもない事態になっていた。青色をしているはずのビールに、色がついていなかったのだ。
商品が完成したときのプレスリリースには「高い醸造技術と瓶内二次発酵によって常温流通できるようになった」と書かれているが、この瓶内二次発酵がネックになっていた。「瓶内二次発酵時に色が落ちる現象がありまして、フタを開けたときには声がでませんでした。まさに絶句ですね」(芦澤さん)
このままではとても販売することはできない。いまから何かできることはないか。富士山プロダクトは、さまざまなことを考えたものの、残された時間は少ない。「販売延期」を決めて、関係者にお詫びの文章を送った。
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