「年収1000万でも苦しい」……貯金100万円未満の「高所得貧乏」が“倍増”している理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)
このところ「世帯年収が1000万円を超える高所得者の生活は、優雅なものではなくむしろ苦しい」という価値観が広がりを見せている。年収1000〜1200万円世帯における“高所得貧乏”の増加は顕著で、その伸び率は前年比で倍増している。
年収1000万円世帯は毎月の出費も高額になりがち
そして、仮に区内に新築マンションを思い切って購入しても、周囲の高い金銭感覚についていくためにまたまたお金がかかってしまう。
総務省の21年における家計調査年報を確認すると、年収1000万円前後の世帯は、それ未満の世帯と比較して、教育費にかける金額が最も高いことが分かった。
年収1000万円前後の世帯は、本来削減できるはずの「被服・履物」や「交際費」「通信費」「その他雑費」で年収300万円程度の世帯よりも2〜3倍ほどの金額を毎月支出している。
また、教育費の負担も見逃せない。教育費は年収1000万円前後の世帯と300万円程度の世帯の間で20倍以上の差がみられた。年収300万円程度の世帯が教育費に平均で月額1099円程しかかけていないのに対し、年収1000万円程度の世帯においては月あたり2万6000円ほどの教育費をかけている。
この要因は、高等教育を実質無償化している「高等学校就学支援金制度」にもある。この制度には児童給付などと同じく「所得制限」が設けられており、共働きの場合は世帯年収1050万円前後、そうでない場合は世帯年収910万円を超えると公立・私立ともに無償化の対象外となる。
その結果、年収1000万円程度の世帯は塾や参考書などの教育費だけでなく、授業料もかかってくるため、他の世帯よりも教育費の負担が大きくなる。
また、都の「公立学校統計調査報告書」によれば、港区や文京区のような平均年収の高いエリアに住んでいる児童のうち、約4割が中学受験を行っている。
周囲に合わせて中学受験の対策を行ったり、合格後に支払う授業料が思わぬ出費となり、高所得でも毎月の出費が嵩(かさ)んでしまう。特に、難関中学校への進学を目的とした塾では、年次によって月謝だけでも4〜6万円ほどかかるケースもあり、ただでさえ高い教育費の平均を何倍も上回る危険性もある。
このように、区内に住居を構える上では、周囲の環境に合わせて教育費や日常の出費が高くなることを覚悟しておかなければならない。
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