連載
「年収1000万でも苦しい」……貯金100万円未満の「高所得貧乏」が“倍増”している理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(4/4 ページ)
このところ「世帯年収が1000万円を超える高所得者の生活は、優雅なものではなくむしろ苦しい」という価値観が広がりを見せている。年収1000〜1200万円世帯における“高所得貧乏”の増加は顕著で、その伸び率は前年比で倍増している。
幸せのハードルをどこに置くか
そもそも「高所得貧乏」という言葉に矛盾がある。年収1000万円で生活が苦しい者がいる一方で、それ以下の年収でも十分な貯蓄を行い、子供と幸福な家庭を築いている例は少なくない。
「定職につかずに、ベンツやレクサスを買って生活苦になる」者に手を差し伸べる者はいないだろうが、「高所得貧乏」については擁護の声も小さくない。
しかし、身の丈を飛び越えた生活水準を実現しようとする意味では両者に本質的な違いはない。「〇〇区に住んでないと幸せではない」「部屋は◯LDK以上でないと幸せではない」「子供は私立でないと……」といった高い幸せのハードルが「高所得貧乏」を生み出す元凶となっていないだろうか。
そこに囚われていると、政府の所得制限や税負担に不公平をいくら述べても「高所得貧乏」からは逃れられないだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
関連記事
- 岸田政権の「新しい資本主義」、最大の被害者が「一般国民」になるこれだけの理由
岸田ショック(Kishida Shock)という言葉が世界中で広がりを見せつつある。2021年には、世界的メディアが相次いで「Kishida Shock」を見出しとしたニュースを配信した。そのような「株主イジメ」による弊害は、回り回って一般庶民に返ってくる可能性が高く、決して他人事ではない。 - リーマン前も現れた「二極化相場」が今年も発生? グロース株に忍び寄る利上げの“影”
コロナ禍が招いた「二極化」は業界だけではない。金融緩和の結果「グロース株」が選好され、「バリュー株」は割安段階で放置されるという相場の二極化も招いた。このような動きはリーマンショックの前夜にも現れていた。グロース株の不振がこの先の経済的なショックを示唆する可能性もある。 - 4000万円が92万円まで減少も? 急増する“レバナス信仰”の裏に隠れた投資信託「負の側面」
小さい資金でも比較的短期で資産形成ができるとして、一部の投資初心者から人気を集めているレバレッジ型の投資信託。しかし、この類の投資信託は、本来であれば長期投資には全く向いていない。上昇相場においての破格のリターンがクローズアップされがちだが、その裏に隠れたリスクを見過ごして運用をしてしまえば、顧客の人生計画は大きく狂いかねない。 - 立民「年収1000万円以下所得税ゼロ」 1番トクするのは高収入の独身ビジネスマン?
衆院選マニフェストの中でも目を引くのが、立憲民主党の掲げる「年収1000万円未満世帯の所得税免除措置」だ。立憲民主党の枝野代表は「経済を良くするには、分厚い中間層を取り戻し、あすの不安を小さくすることが大事」と発言しており、実現すれば家計の負担が減少すると巷でも歓迎する意見も散見される。 - 日本にも“金利上昇”到来で、住宅ローン契約者の4人に1人が破たん予備軍に?
金利市場は日銀の利上げをやや織り込みはじめている。住宅ローンをはじめとしたさまざまな「金利」のベースラインが上がるイベントである「利上げ」。これが日本で実現する日がくれば、主に住宅ローンを組んでいる国民にとって大きな痛手となり得る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.