10兆円市場のコンビニ払込票、PayPay攻勢に反撃のファミマ:金融ディスラプション(1/2 ページ)
5月からファミリーマートは、自動車税や公共料金、通販代金などの支払いにアプリ「FamiPay」を使うとポイントを還元するキャンペーンを始めた。同社としてはコンビニ代理収納において初のキャンペーン。その背景には、PayPayの攻勢があった。
5月からファミリーマートは、自動車税や公共料金、通販代金などの支払いにアプリ「FamiPay」を使うとポイントを還元するキャンペーンを始めた。アプリのバーコードを店頭レジでスキャンすると抽選でポイントを付与するほか、アプリから請求書のバーコードを読み取って支払う「FamiPay請求書払い」などを使うと当選確率がアップする。
実は、同社としてはコンビニ代理収納において初のキャンペーンだ。なぜ、このタイミングでキャンペーンを始めたのか。
きっかけとなったのは、コード決済サービスPayPayの攻勢だ。何が起きたのかを説明する前に、まずコンビニ代理収納の状況を確認しておこう。
10兆円市場のコンビニ払込票
公共料金や税金などをコンビニ店頭で支払えるコンビニ代理収納サービスは、スタートから30年間、ずっと成長を続けてきたサービスだ。日本代理収納サービス協会の調べによると、2020年度で年間8億9000万枚。店舗設置のMMK(マルチメディアキオスク)収納方式も含めると10億枚を超える。1枚あたりの平均決済額は1.1万円で、実に10兆円を超える市場だ。
【訂正:5/7 コンビニ代理収納サービスの年間取扱枚数は8億9000万枚です。お詫びし訂正いたします。】
セブン-イレブンが、1987年に東京電力の料金収納を始めたのがこのサービスの始まり。翌88年には東京ガスも同様の仕組みで始め、また他のコンビニも同じ仕組みを取り入れたことで、結果的に同じ払込票をどこのコンビニでも使えるようになったという歴史がある。
30年間ほぼ内容が変わらず、安定して利用が増加してきたコンビニ代理収納サービスだが、そこにやってきた黒船がPayPayだ。2019年9月に「PayPay請求書払い」サービスを開始。手元の請求書をスマホのカメラで読み取り、自宅でも支払える仕組みだ。折しもコロナ禍の最中ということもあり、店頭に出向かずに請求書の支払いが行えることで利用者が急増した。
その結果、コンビニ取り扱い数は18年をピークに下落トレンドに入った。「請求書の発行枚数自体は増え続けるかもしれないが、スマホペイが強力なライバルだ」と、ファミリーマートで収納代行サービスを管轄する喜多一三氏は話す。
実はコンビニ3社の中で、スマホペイサービスを持っているのはファミリーマートだけだ。「ファミマだけがスマホペイを持っていて、対抗しようとしたらできる。取られるくらいなら自分たちでもやろう」というのが、今回のキャンペーンに踏み切った背景にある。
関連記事
- ファミペイ翌月払い、新制度活用の狙い 公共料金や税金にも対応
ファミリーマートは9月3日、コード決済サービス「FamiPay」の後払いサービス「ファミペイ翌月払い」を9月7日に開始すると発表した。残高がなくても最大10万円まで支払いに使える後払いサービスで、利用額は利用の翌月末に指定した銀行口座から引き落とされる。手数料はかからない。公共料金や税金の支払いにも使えることがFamiPayの特徴であり、翌月払いでもFamiPayボーナスが貯まる。 - ファミペイで「お財布レス」目指すファミマ 88億円還元キャンペーンも実施
ファミリーマートは、バーコード決済「FamiPay」を7月1日から展開する。スマートフォンアプリ「ファミペイ」にはポイントカード機能やクーポン機能も盛り込み、「お財布レス」コンビニを目指す。 - PayPay、ポイントを10月グループ外解放へ 楽天ポイント対抗目指す
PayPayは4月26日、10月以降「PayPayポイント」をグループ外へ解放することを明らかにした。加盟店が、付与できる共通ポイントへの進化を目指す。加盟店は、PayPayポイントを購入し、顧客に付与したり利用できるようにするなど、マーケティングに活用できるようになる。 - PayPay、10月から決済手数料有料化1.6%に 他社を大きく下回る
PayPayは、これまで無料としてきた中小店舗向け決済手数料を10月1日から有料化する。月額1980円(税別)の「PayPayマイストア ライトプラン」への加入を条件に、決済金額の1.6%とする。クレジットカードが2.5〜3.75%、他のコード決済が2〜3%程度の手数料を課しているのに比べて安く、競争力を維持する狙いだ。 - 決済手数料有料化のPayPay、黒字化への道筋(前編)
PayPayは8月19日、これまで無料としてきた「MPM」方式と呼ばれる店舗に印字されたQRコードを掲示してユーザーがスマートフォンアプリで読み取って支払いを行う決済について10月1日以降の手数料を1.60%または1.98%にする。これによって業界がどのように変化し、これによって赤字続きだった同社がいかに「黒字化」を考えているのか、ビジネスモデルの面から考えてみたい。 - 「コンビニでも公共料金が支払える」がローソンにとっておいしくない理由
コンビニで公共料金などが支払える「収納代行サービス」の利用が増えている。利用者だけでなくコンビニにとってもおいしいサービスかと思いきや、ローソンは収納代行手数料の見直しを求めているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.