10兆円市場のコンビニ払込票、PayPay攻勢に反撃のファミマ:金融ディスラプション(2/2 ページ)
5月からファミリーマートは、自動車税や公共料金、通販代金などの支払いにアプリ「FamiPay」を使うとポイントを還元するキャンペーンを始めた。同社としてはコンビニ代理収納において初のキャンペーン。その背景には、PayPayの攻勢があった。
安い手数料で参入のPayPay
とはいっても、店頭からFamiPayでの支払いに切り替えてほしいという意図はない。「店頭よりもアプリを強化していく意思はない。どちらもファミマなので、行きなれた店で払いたい人はそうしてほしい。自宅でスピーディーに払いたい人は、新しい選択肢も用意する」(喜多氏)という位置付けだ。
なぜアプリでの支払いを全面的に推進しないのか。ここには、コンビニ代理収納サービスの仕組みと手数料ビジネスの難しさが関係している。
請求書をアプリで読み取って支払うためには、発行元と交渉して個別に対応を進める必要がある。PayPayはサービス開始から2年半、着々と対応先を広げてきた。この4月に北海道と山形県、6月には秋田県が対応の予定で、ついに47都道府県すべてが都道府県税の支払いに対応する。自動車税支払いが可能になる形だ。
一方で、市税や国民健康保険料などの支払いについては4月の時点で政令指定都市をやっとカバーできたばかり。3月末時点で1129自治体と、全国自治体の3分の2に至った。
民間の請求書発行を代行している企業が約80社、また地方地自体は18社ある収納代行会社を経由して取り引きが行われる。スマホペイで請求書払いを可能にしようと思ったら、これら企業と契約し、システムを接続する必要がある。その上で、例えば最終支払い先である東京都などの自治体の許可も得る必要があるわけだ。
PayPayは新規参入にあたり、従来のコンビニ店頭決済よりも決済手数料をかなり抑えた形でサービスを提供している模様だ。というのも、ファミリーマートがFamiPayを使ったスマホペイ収納を提案するにあたり交渉を行うと「スマホペイよりも高いじゃないか、と言われてしまう」(喜多氏)からだ。
ファミリーマートとしては、コンビニ店頭に加えて新しくデジタル店舗ができたという位置付けとし、FamiPay請求書払いでも店頭と同じ手数料率で交渉したい。一方で、PayPayが値引いてサービスを提供しているため、料率を巡る交渉は難航する。
これが、店頭で支払い可能で契約があるにも関わらず、FamiPay請求書払いでは支払えないところが存在する理由だ。
コンビニ払込票取り扱いは、ファミリーマートだけでも同社が取り扱うお金の約半分の規模がある。利用者数も億人単位と、コンビニにとってメインとなるサービスの1つだ。店頭支払いという既存事業を守りつつ、スマホペイの攻勢に対応しなくてはならない。まさにビジネススクールでいうイノベーションのジレンマの状態にある。
「スマホペイが攻めて来ているといってもシェア10%は取られていないだろう。まだ9割以上はコンビニ店頭だ。ファミマとしては、デジタル領域にも布石を打ちつつ、どうせ払うならファミマで払うことがお得だという取り組みを継続的にやっていきたい」(喜多氏)
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