不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/8 ページ)
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。
鉄道ファンにとって最高の「借景」
しかし、世の中には好事家多し。線路際を好む利用者もいる。私のような鉄道ファンだ。建物だけの殺風景な景色より線路が見えたほうが嬉しい。列車の音を聴きながら眠りにつけば、まるで寝台列車に乗った気分。
朝はベッド脇のアラームより列車の音で目覚めたい。海と線路に挟まれた立地のホテルで、海が見える部屋と線路が見える部屋、どちらがいいかといえば喜んで線路を選ぶ。自分で書いていてアホだなあと思うけれど。好きだから仕方ない。
私は乗り鉄の旅に出かけるときはトレインビューにこだわらなかった。日暮れまで列車に乗り、日が昇れば列車に乗る。つまりホテル滞在は夜だけ。滞在時間も短いから、第1条件は駅から近いこと。次に値段が安いこと。景色は二の次三の次。しかし、駅から近くて値段が安い部屋は、前出の理由で線路際になりやすい。それはそれで幸運だと思うけれど、トレインビューを指定することはなかった。
しかし仕事の旅となれば、なるべくトレインビューにする。用件以外の時間は休憩するか原稿を書くか。いずれにしてもホテルの滞在時間が長くなるからだ。そんなときは鉄道の景色を楽しみたい。鉄道好きなビジネスパーソンも同様だろう。
かつてはトレインビューホテルの情報がなかった。地図を見て、線路が見えそうだなと見当をつける程度で、「線路が見える部屋がいいです」とは恥ずかしくてオーダーしにくかった。「安い部屋がいいのかな」と気を回されて、線路が見えないもっと安い部屋にされると泣けてくる。それがいまやホテル側から「トレインビューですよ」と手招きしてくれる時代になった。鉄道趣味が社会に認知されて本当に良かった。
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