不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/8 ページ)
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。
元「不人気部屋」でも133件ある
楽天トラベルで「トレインビュー」を検索したところ133件もあった。宿泊プラン数ではなく施設数だ。これだけの数があると「トレインビュー」だけでは上位になりにくい。
主要駅周辺には複数のホテルがあり、トレインビューだけでは競合するはずだ。立地によって列車の見え方も違うから差別化できるとして、それ以外の価格、夜景、朝食ビュッフェの充実度など、ほかの要素も影響する。
ホテル特化型メディア「HotelBank」によると、21年10月現在、日本国内の宿泊施設数は5万4772施設もあり、ビジネスホテル、リゾートホテルは増加、旅館は減少しているという。これだけの宿泊施設数のなかでトレインビューの133件は少ないけれども、そもそもトレインビューというカテゴリーがあり、集計されていることが興味深い。
なぜなら「トレインビュー」ルームは、その名が付く前は不人気部屋だと思われたからだ。理由は分かりやすい。線路のそばだから、である。
列車が走れば騒音が出る。都市部であれば終電は0時前後、始発は5時前後。静かな時間は数時間しかない。いや、旅客列車が走っていなくても鉄道は休まない。旅客列車が走らない時間帯に回送列車や貨物列車が走り、毎日とはいわないけれど保線作業がある。
古い建物であればうるさくて眠れない。新しい建物でも、静寂を好む人にとっては気になる。都市部であれば夜景も楽しみだけど、線路は基本的には真っ暗で、列車はあっという間に通り過ぎる。
だから、線路際の部屋は積極的に案内しない部屋だ。稼働率が上がったときに仕方なく使う。出張でビジネスホテルに泊まったとき、線路際の部屋に通されたら「今日は混んでいるみたいだな」「もっと早く予約すればよかった」「料金の安い部屋だからここになったんだな」など、ちょっと残念な気持ちになる人のほうが多いと思う。
シティホテルでも少し高級なところになると、トレインビュールームそのものがない。低層階では会議室、レストラン、事務室、リネン置き場、清掃員待機室になる。高層階にやっと客室がつくられるけれど、線路は真下だからよく見えない。
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