不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/8 ページ)
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。
便利なビジネスホテルが楽しい滞在型に
私は常々、すぐれた商品の要素は「便利」か「楽しい」のどちらかに集約されると考えている。その判断基準で考えると、トレインビューホテルは「楽しい」カテゴリーだ。しかし、トレインビューホテルの立地はもともとビジネスホテル。ビジネスホテルのウリは「便利」だった。
「駅に近い」「繁華街に近い」「値段が手頃」などの要素が重視された。それで十分だけれど、弱点としては「滞在型」の利用者を得にくい。用事が終わればすぐに帰ってしまう。1泊か、せいぜい2泊である。
しかし、ここに「景色を楽しむ」という要素が加わるとどうなるか。利用者は寝るためだけではなく、日中もホテルで過ごしたいと思う。「ホテルで過ごしたい」という要素は本来、リゾートホテルや温泉旅館の要素である。「夜にチェックインして、翌日の朝出発」の利用者が「夜にチェックインして、翌日はトレインビューを楽しんで、もう1泊」になるかもしれない。私も時間が許せばそうする。一日中列車を眺めるかどうかはともかく、周辺の観光や食事を楽しむとしても、トレインビューは「プラス1泊」の動機になる。
鉄道ファンにとって、トレインビューのビジネスホテルは滞在型リゾートになり得る。そこに気付けば、リゾートホテル並みの付加価値のアイデアはどんどん出てくる。鉄道にちなんだ食事を提供しよう。鉄道にちなんだグッズやおみやげを販売しよう。鉄道にちなんだ街歩きなど、オプショナルツアーを提供しよう。
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - 新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。 - 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。 - 東京メトロ「有楽町線」「南北線」の延伸で、どうなる?
東京メトロ有楽町線と南北線の延伸が決定した。コロナ禍で事業環境が大きく変化する中、東京メトロが計画する今後の戦略とは。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.