そろそろ無視できない「人的資本経営」に、タレントマネジメントを活用する:SAP SuccessFactorsで検証(1/2 ページ)
国内でも重要視され始めている「人的資本経営」を実現するためには、社内の人材に関する情報を管理していくことが求められます。こうした情報の管理に関して、タレントマネジメントシステムの活用は有効なのでしょうか?
本記事は、筆者のnote「人的資本経営とタレントマネジメント(その3) 〜「人的資本経営」にタレントマネジメントは有効か?〜」をITmedia ビジネスオンライン編集部で一部加筆・編集の上、転載したものです。
「人的資本経営」にタレントマネジメントは有効か?
前編では、「人的資本経営」を実現するためには、前章で挙げたような観点で情報を管理していくことが求められることを説明しました。こうした情報の管理に関して、タレントマネジメントシステムの活用は有効なのでしょうか?
ISO30414で規定されている11領域のうち、前章で取り上げた「後継者計画」「ダイバーシティ」「スキルと能力」の3領域についてSAP SuccessFactorsで検証します。
検証にあたっては、下記の3つの観点でチェックします。
- (1) 該当する情報を管理できるか
- (2)どのように可視化できるか
- (3)希望するフォームでのレポート作成はできるか
(1)該当する情報を管理できるか
前編で取り上げた3つの領域の項目は、具体的には以下の通りです。
後継者計画
- クリティカルポジションにおける内部昇格者の割合(後継者有効率)
- リーダーポジションの数に対する後継者候補プール数の平均の割合(後継者カバー率)
- 期間ごとに後継者を準備ができるクリティカルポジションの割合(後継者準備率)……(1)即時/(2)1〜3年で準備完了/(3)4〜5年で準備完了
ダイバーシティ
- 年齢、性別、障害などに関する組織における割合
- 取締役会メンバーやマネジメントチームの多様性
- その他の多様性の指標
スキルと能力
- 人材開発や研修の総コスト
- 研修への参加率
- 従業員あたりの平均研修時間
- 研修カテゴリごとの参加割合
- 労働力のコンピテンシーレート
ダイバーシティの「その他の多様性の指標」については、ユーザーが選択する指標次第ですが、その他の情報項目については全て管理可能であることを確認しました。対応するSAP SuccessFactorsのモジュールは下記の表1の通りです。
一部コストなどの情報には、一般管理費などに関する情報を用いるため、その際は会計システムとの情報連携が必要になります。
ISO30414では表1の3領域に8領域を加えた全11領域58項目について情報管理が規定されています。このうち、全体の過半数の項目についてはSAP SuccessFactorsが標準で保有する項目でほとんど管理が可能で、勤怠やエンゲージメントなどの関連システムと連携すれば、9割程度の項目は管理できそうだとも確認できました。なお、残りの1割は定量化が困難な定性的情報です。
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