そろそろ無視できない「人的資本経営」に、タレントマネジメントを活用する:SAP SuccessFactorsで検証(2/2 ページ)
国内でも重要視され始めている「人的資本経営」を実現するためには、社内の人材に関する情報を管理していくことが求められます。こうした情報の管理に関して、タレントマネジメントシステムの活用は有効なのでしょうか?
(2)どのように可視化できるか
代表的な項目について、SAP SuccessFactorsでどのように確認(可視化)できるのかは以下の通りです。
後継者計画
- クリティカルポジションにおける内部昇格者の割合(後継者有効率)
- リーダーポジションの数に対する後継者候補プール数の平均の割合(後継者カバー率)
- 期間ごとに後継者を準備ができるクリティカルポジションの割合(後継者準備率)……(1)即時/(2)1〜3年で準備完了/(3)4〜5年で準備完了
重要なポジションに対して後継者として計画的に育成する社員が決められているか適時確認するためには、下記表2のタレントプール一覧を参照します。
後継者プールは作成して終わりではなく、継続的に見直しをかけていくことが大切です。幹部候補生を計画的に育成するという企業として大変重要なテーマであるため、注力して取り組むべき業務です。
ISO30414の「後継者カバー率」については、「リーダーポジションの数」に対する「リーダーポジションのタレントプール数」の割合がこれに当たります。
後継者の準備状況については、個々のタレントプールから確認できます。画像の例では、即時対応可能な候補者が2人、1〜2年で対応可能な候補者が2人、3〜5年で対応可能な候補者が4人いることが確認できます(図3)。
また、後継者が設定されているポジションであれば、図4の後継者組織図で候補者の優先順位もあらかじめ登録しておくことができるので、後継者の計画的育成はもちろん、不測の事態が発生した場合の後継者選定時にも十分活用できると思います。
ダイバーシティー
- 年齢、性別、障害などに関する組織における割合
- 取締役会メンバーやマネジメントチームの多様性
- その他の多様性の指標
取締役会メンバーやマネジメントチームの年齢や性別の構成については、当然確認できますが、あらためて紹介する必要もないかと思いますので、別の視点でマネジメントチームの能力分布が現状どのようになっているかを俯瞰する9BOXの活用例を紹介します。
図9は、役員会メンバーのポテンシャル(適性、コンピテンシーなど)とパフォーマンス(成果)を9BOXで表したものです。
マネジメントチームの年齢や性別の分布を把握するだけでなく、現在のマネジメントチームのポテンシャル×パフォーマンスを把握して、今後どのようなポテンシャルの人材をマネジメントチームに加えていくべきかの判断材料のひとつとして活用すれば、質の高いマネジメントチーム作りに役立てられます
スキルと能力
- 人材開発や研修の総コスト
- 研修への参加率
- 従業員あたりの平均研修時間
- 研修カテゴリごとの参加割合
- 労働力のコンピテンシーレート
研修に関する情報は、研修管理のモジュールの機能を使って下記図10、11のように可視化できます。
(3)希望するフォームでのレポート作成はできるか
先述の通り、人的資本経営を実現するうえで必要になる情報をISO30414で規定されたデータとした場合、タレントマネジメント(SAP SuccessFactors)を関連システムと連携させることで、全項目の9割程度は管理できると分かりました。したがって、上記で紹介したような標準機能で可視化する以外にレポートを作成することも可能です。ただしこれらのレポート作成は、今回のケースに限らず企業ごとに実現したい要件が異なります。
人的資本経営には、従来の人事管理システムだけでは網羅されていない人材に関する情報が多々必要になります。
既にシステムを導入しタレントマネジメント施策に着手している企業も、必要な情報を可視化し経営に役立てていくために、タレントマネジメントの活用範囲を広げ、リテラシーレベルをさらに高めて対応していくことが望ましいでしょう。
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