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売り切り型ビジネスに、カスタマーサクセス部は必要か? 顧客との関係構築で陥りがちな”誤解”を解説(後編)【特集】カスタマーサクセスの始め方(2/2 ページ)

サブスクリプションモデルやSaaSビジネスの広がりに伴い、「顧客の成功」を意味するカスタマーサクセスの重要性が高まり始めている。花王やキユーピーなど大手企業も部署新設に動き出し、盛り上がりを見せる。しかし、そもそも「売り切り型ビジネス」にカスタマーサクセスは必要なのか? 顧客との大事な架け橋となるカスタマーサクセスで陥りがちな誤解を解説していく。

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カスタマーサクセスの役割はtoC、toBでここまで変わる

 コミューンの高原氏は、役割の違いについて「成功体験の違い」を指摘する。例えば、SaaSなどのtoBサービスは「そのツールを導入することで、企業の売り上げを伸ばす」などゴールが明確なことが多いという。売り上げを伸ばすために、ツールの使いやすさを改善したり、仕様を変更したりと打ち手が分かりやすいことが特徴といえる。サービスを使用した結果、売り上げが伸びれば「顧客の成功」は実現されることになる。

 一方、toCサービスは顧客が「使ってよかった」「買ってよかった」と実感するポイントが人によって異なることが多い。音楽のストリーミングサービスを例に考えてみよう。楽曲数に満足を覚える人もいれば、好みのアーティストの曲が多く聴けることに喜ぶ人や音質などを評価する人もいるだろう。また、toC向けのサブスクビジネスとなれば顧客数も膨大になる。

 さまざまな打ち手が存在するため、一概に「これをすることが顧客の成功につながる」と断言できないのだ。


toCサービスは「顧客の成功」が複数存在する

共通する重要な要素は?

 KiZUKAIの山田社長は「データ活用」はどちらの事業形態にも共通して重要なポイントと説明する。

 「toBはtoCほど顧客数が多くないのが一般的です。カスタマーサクセス部の1社員が対応するクライアント数が10社だと仮定します。力技ですが、データを活用しなくても、毎月各社と打ち合わせをして不満や改善点などの情報を十分に吸い上げることができていれば、解約可能性を下げ、高い顧客満足度をキープすることもできるでしょう。

 しかし、対応するクライアント数が100社になった場合に同じことができるかというと難しいと思います。顧客数に合わせてカスタマーサクセス職を採用するのも一つの手ですが、採用コストや育成コストなどが利益を圧迫する可能性があります。

 そこで、データ連携が生きてきます。解約傾向にあるクライアントの特徴をAIが発見できれば、事前に手を打つことができます。ロイヤルカスタマーになる顧客の傾向が分かれば、顧客育成にも役に立ちます。

 toCサービスは顧客数が数万単位に上ることも。データ活用無くして、カスタマーサクセスを実現するのは難しいと思います」(山田社長)


toB、toC問わず、データ活用が一つのカギになってくる

 山田社長は「日本はクラウドの導入が遅れたことや自社サーバを使用し続けている企業がまだまだ多い」と日本のDXの遅れについても言及した。定量的な指標をもとに効果的な意思決定を下すためにも、カスタマーサクセスとデータの連携は切り離せない要素といえそうだ。

 「カスタマーサクセス」という職種は2019年にサブスクサービスの広がりに伴い、その認知を高めていった。花王やキユーピーなどの大手企業も部署新設に動いているものの、まだまだ新しい取り組みのため、多くの企業が「正解」を模索している状態だ。

 カスタマーサクセスは、顧客規模や顧客の属性、toBかtoCサービスかで役割も成功の定義も大きく変わってくる。自社のサービスや商品の特性、顧客から支持されているポイントのすり合わせを丁寧に行いながら、自社利益最大化のために試行錯誤を繰り返すことが求められるだろう。

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