人命を預かる仕事の重さとは? 新人CAをハッとさせたコックピットの「黒いカバン」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
知床遊覧船の痛ましい事故のニュースを聞いたとき、筆者が「真っ先に浮かんだ」というのは、航空会社での勤務時に見ていた、フライトエンジニアが持つ“黒いカバン”だ。それはどのようなものかというと──。
僕ら3社は(天気が悪ければ)やめようねってすぐなるけど、あそこだけはならない
岬の情報は釣り船や地元の漁師の携帯に電話をかけて「知床遊覧船」以外は一丸となっています
(事故当日)うちの船長も出るなよと言っているんですよ。本人にね。それを無視して出ちゃうこと自体がおかしい(以上、出典記事)
素人同然のメンバーで運航していた(出典記事)
……など。
同業者や元従業員たちから批判されていた会社の観光船が、北海道・知床半島の沖合いで4月23日に事故を起こしました。観光船「KAZU I(カズワン)」。14人の命を奪い、いまだに12人が行方不明という大惨事を招いた、許し難い事故です。
この衝撃的な事故を聞いたとき、真っ先に浮かんだのは私が航空会社での勤務時に見ていた、コックピットクルーが持ち歩く“黒いカバン”でした。
「コックピットの計器の数値は絶対に暗記してはいけない。常にマニュアルを見ながら数字を確認して、運行中も、計器の場所と数字の確認を、声に出しながらやらないとダメ。覚えた途端にミスは起こる。絶対に覚えないことが、ミスを防ぐ最大の方法なんだ。これ、持ってごらん」
フライトエンジニア(FE)の方はこう言って、見るからに重そうな黒いパイロットケースを差し出しました(米ボーイング747-400が導入されるまで、コックピットには機長、副操縦士、FEの3人が乗務していました)。
「重たいだろ? これがね、僕たちが人命を預かっているという、仕事の重さなんだ」
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