人命を預かる仕事の重さとは? 新人CAをハッとさせたコックピットの「黒いカバン」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
知床遊覧船の痛ましい事故のニュースを聞いたとき、筆者が「真っ先に浮かんだ」というのは、航空会社での勤務時に見ていた、フライトエンジニアが持つ“黒いカバン”だ。それはどのようなものかというと──。
全ての企業が、「人の命」とつながっている
腕が伸びちゃうのじゃないかってぐらい重くて、10キロはありそうなカバンは、「“僕たち”の仕事の重さ」だ、と。 「“僕たち”の仕事の重さを忘れないために、たくさんのマニュアルの入った大きな重たいカバンを持って歩く」んだ、と。
もう30年前、昔の話で恐縮ですが、新人客室乗務員(CA)だった私に、FEの方は教えてくれたのです。それは分厚いサービスマニュアルをどうにかして小さくして、軽くすることばかりを考えていた私をハッとさせた言葉であり、「訓練、訓練、訓練」の嵐で「30歳過ぎまで食えない」と言われていたP訓(パイロット訓練生)の謎が解けた瞬間でもありました。
その“僕たち”と同じ「人命を預かる仕事」を運営する会社が、大切な人の命を、道連れにしたのです。
しかも、観光船の通信設備では電波が届かないエリアがあったにもかかわらず、国が船舶検査を通過させたことも分かっています。
国土交通省は「今回の出来事を鑑みると、検査の在り方を検討していく必要がある」として、検査が不十分だった可能性があるという認識を示したとされていますが、いまさら何をおっしゃっているのでしょうか。
いったい、何のための検査だったのでしょうか? まったくもって理解不能です。
それと同時に、飛行機や遊覧船、バス、電車などに関わる業種だけではなく、全ての業種には「人」がいます。利用する人、買ってくれる人がいるからこそ、企業経営は成立する。極論をいえば全ての企業が、直接的・間接的に「人の命」とつながっています。今回の事件は決して他人ごとではない、他人ごとにしてはいけないのです。
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