楽天モバイル“ゼロ円撤回”で、変更迫られる事業戦略:本田雅一の時事想々(3/4 ページ)
楽天モバイルは5月13日に、データ通信量1Gバイトまで無料としていたプランを、最低でも1078円(税抜980円)からの「Rakuten UN-LIMIT VII」へと移行させるとを発表した。ユーザーからは不満の声が挙がっているが、これは楽天モバイル自身にとっても事業戦略の変更を迫られる想定外の事態だ。なぜかというと……。
新規顧客獲得の「予算見直し」が必須に
契約回線維持コストはゼロではない。まして1Gバイトまで無料だったのだから、そこまでのコストは新規顧客獲得費用として、楽天モバイル内部では捉えていたのではないだろうか。
携帯電話利用者の総数が増えない中で、主回線として新しい通信事業者が顧客を獲得するのは難しいからだ。
維持費ゼロ円でまずは顧客になってもらい、あとは楽天グループのサービス連携やポイントアップ、通信回線品質の改善で“実際にお金を払ってくれる顧客へ”と移行してもらうはずだった。ここで顧客が離れてしまえば、ここまで1年あまり続けてきた維持費ゼロ円を提供するために計上していた予算も無駄に終わってしまう。
楽天モバイルも、新しいプランである「Rakuten UN-LIMIT VII」への移行に際して、始めの2カ月は1Gバイト未満無料、さらに2カ月はポイント還元を強化するなど、よりお得なプランになるよう発表までに調整していたあとが伺える。このように、ポイントなどで“よりお得”にするための原資を増やさねばならないのも、維持費ゼロ円をやめねばならないため。
つまり、維持費ゼロ円の回線を全廃せねばならないことは、楽天モバイルにとっても大きな痛手、想定外のことだ。
楽天モバイルは顧客引き止めのために行う、月額相当額のポイント還元も、2カ月が最大。継続的にポイント還元することで、「見かけ上、ゼロ円維持することはできないのか?」という声もあるようだ。
しかし楽天ポイントはIFRS基準で処理されるため、基本料に相当する金額を売上金から控除しなければならない。すると現在、維持費無料で契約されている回線に、980円を掛けた金額が、毎月、売上から控除されることになる。この処理を長期に渡って継続することは困難だ。
楽天モバイルとしては、今回のプラン提示が限界だったのではないだろうか。
関連記事
- ソフトバンクG1.7兆円の最終赤字 孫正義氏「手元に現金を厚く持つ」戦略とは
ソフトバンクグループは5月12日に、2022年3月期の連結決算を発表した。最終損失は1兆7080億円で、過去最大の赤字となった。同社の前期業績は過去最高で、国内最大の純利益(4兆9879億円)を記録していたが、1年で大きく赤字へと転じた。 - オンキヨー、自己破産手続きへ 債務を完済できず
オンキヨーホームエンターテイメント(大阪府東大阪市)は5月13日、大阪地方裁判所に自己破産を申請し、手続き開始の決定を受けたと発表した。 - ラーメン業界に黒船来航! 約90秒で「アツアツな本格ラーメン」を作る自販機がすごい
JR東京駅、羽田空港、首都高芝浦パーキングエリアで、ラーメン自販機「Yo-Kai Express」の設置が始まった。いったい、どんな自販機なのか? CEOが話す強みや戦略は? - 全国15棟のドーミーインで、「ホテルに暮らす」サブスク提供 狙いは?
共立メンテナンスは3月31日、ホテル暮らしのサブスクサービス「goodroomホテルパス」内で、新たにドーミーイン14棟のマンスリープランの提供を始めた。従来の宿泊だけではない、「ホテルに暮らす」「ホテルで仕事する」といった需要を狙う。 - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.