楽天モバイル“ゼロ円撤回”で、変更迫られる事業戦略:本田雅一の時事想々(2/4 ページ)
楽天モバイルは5月13日に、データ通信量1Gバイトまで無料としていたプランを、最低でも1078円(税抜980円)からの「Rakuten UN-LIMIT VII」へと移行させるとを発表した。ユーザーからは不満の声が挙がっているが、これは楽天モバイル自身にとっても事業戦略の変更を迫られる想定外の事態だ。なぜかというと……。
段階的な「収益体質改善」のハズが……
ゼロ円維持が可能になったのは昨年4月からのこと。筆者も当時、iPad用のデータ通信回線用に「Rakuten UN-LIMIT VI」を契約した。
日常的には使わない通信モデム用の契約や、あるいは子供向けに通信量・アプリを管理しながら使わせている場合、他の主回線契約で通信量上限に達した時のバックアップ用など“維持費がゼロ”ということを理由に、このタイミングで楽天モバイルと契約、あるいは一部の契約を切り替えたという例は多いだろう。
回線維持にコストがかかるのは当然で、そのために最低利用料金が設定されることに抵抗はないが、それでも「使わない場合、無料になるなら」と気軽に契約した回線は、eSIM対応端末が進んできたこともあって決して少なくないだろう。
維持費無料が前提で契約した消費者が、維持費の有料化で離れてしまうのはある意味、当たり前のことで、発表後にSNSなどで怒りの声が上がっていることに違和感はない。
楽天モバイル会長の三木谷浩史氏も、既存利用者は維持費無料のまま継続利用をさせたいと考えていたようだが「電気通信事業法による制約」(三木谷氏)で、「Rakuten UN-LIMIT VI」ユーザーも自動的に1078円からの「Rakuten UN-LIMIT VII」へと移行されることになってしまった。
新たに電波帯域が割り当てられた新規参入事業者である同社は、他社ネットワークのMVNO事業から自社ネットワークへの移行を、自社ネットワークの整備状況に応じて段階的に進めてきた。
「Rakuten UN-LIMIT VI」も、そうした段階的な整備の中の一つにあった戦略で、維持費ゼロ円で使い始めてもらい、通信エリアや速度がどの程度改善してきているかを実感してもらうことが目的だった。
つまり、「いずれは主回線として使ってもらえる」──そんな自信を持って維持費無料プランの提供を開始したと考えられる。
関連記事
- ソフトバンクG1.7兆円の最終赤字 孫正義氏「手元に現金を厚く持つ」戦略とは
ソフトバンクグループは5月12日に、2022年3月期の連結決算を発表した。最終損失は1兆7080億円で、過去最大の赤字となった。同社の前期業績は過去最高で、国内最大の純利益(4兆9879億円)を記録していたが、1年で大きく赤字へと転じた。 - オンキヨー、自己破産手続きへ 債務を完済できず
オンキヨーホームエンターテイメント(大阪府東大阪市)は5月13日、大阪地方裁判所に自己破産を申請し、手続き開始の決定を受けたと発表した。 - ラーメン業界に黒船来航! 約90秒で「アツアツな本格ラーメン」を作る自販機がすごい
JR東京駅、羽田空港、首都高芝浦パーキングエリアで、ラーメン自販機「Yo-Kai Express」の設置が始まった。いったい、どんな自販機なのか? CEOが話す強みや戦略は? - 全国15棟のドーミーインで、「ホテルに暮らす」サブスク提供 狙いは?
共立メンテナンスは3月31日、ホテル暮らしのサブスクサービス「goodroomホテルパス」内で、新たにドーミーイン14棟のマンスリープランの提供を始めた。従来の宿泊だけではない、「ホテルに暮らす」「ホテルで仕事する」といった需要を狙う。 - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.