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海外は「賃上げラッシュ」なのに、なぜ“安いニッポン”は我が道を行くのかスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

多くの国で「賃上げラッシュ」が起きている。欧米だけでなく、マレーシアや韓国などでも賃上げの報道が続いているが、その一方で、なぜ日本は乗り遅れているのか。背景に何があるのかというと……。

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安いニッポンはわが道を行く

 しかし、そんな「賃上げラッシュ」という世界的潮流に背を向けて、わが道をいくようなユニークな国もある。その筆頭が、われらが「安いニッポン」だ。

 ご存じのように、日本は他の先進国と比べると、賃金が安い。この30年さまざまな国が賃上げを続けた中で、日本だけはビタッと低賃金が固定化され、昨年にはついに韓国にまで平均給与や1人当たりの労働生産性で抜かれてしまう有様だ。

 そんな「異次元の低賃金」が続く日本なので当然、この世界的な物価上昇にも「異次元の対応」をしている。

 その中でも、海外の人々が衝撃を受けるのは、この問題を政治がまるで他人事のようにスルーしている点だ。諸外国では「物価上昇に合わせて賃上げだ」という感じで、政府などがある程度の強制力をもって大幅賃上げを断行しているのに、日本政府の場合は「賃上げしたら良くないことが起こるのでは」「じっくりと議論を重ねよう」なんてムニャムニャ言っているだけで結局、「何もしない」という方向に落ち着いている。


安いニッポンはわが道を行く(写真提供:ゲッティイメージズ)

 例えば4月27日、衆院厚生労働委員会で、日本共産党の宮本徹議員が、後藤茂之厚労相に対して、世界的な「賃上げラッシュ」を引き合いに、日本でも最低賃金を1500円にすべきだと迫ったところ、こんな答えが返ってきた。

 「まずできる限り早期に全国加重平均1000円以上を目指したい」

 物価上昇なんて知ったことかと言わんばかりのマイペースぶりだが、ここまで賃上げに腰が引けているのは、政治家にとって国民の生活などより、よほど大切な「選挙」のためということがある。

 昨年、菅義偉前首相は日本の生産性を向上していくには、最低賃金を着実に引き上げていくべきだということで、政治判断で最低賃金を「全国平均で28円アップ」と過去最大の引き上げを断行した。

 諸外国からすればなんともしょっぱい賃上げだが、日本商工会議所や経済評論家から「そんな高い賃金を払ったら会社は倒産だ」「地方には失業者があふれかえるぞ」「これで日本経済は終わった」などと文句が殺到したのである。

 「28円アップ」だけでも「国賊」扱いである。もしまかり間違って欧米のような1500〜2000円の最低賃金などにしてしまったら、自民党の有力支持団体である日本商工会議所や全国の商工会議所からの「日本を潰す気か!」という嵐のようなブーイングで、政治基盤の弱い岸田文雄首相のクビなどあっという間に飛んでしまうのである。

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