賠償金や訴訟費用に備え、加入する企業が増加中 「ハラスメント保険」とは?:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(2/2 ページ)
パワハラ防止法におけるハラスメント防止措置が中小企業にも適用されるなど、企業のハラスメントに対する厳格な対処がより一層求められています。こうした流れを背景に、「ハラスメント保険」に加入する企業が増えています。
ハラスメントの内容が多様化 「カスハラ」に備える保険も
ハラスメントというと、従来、セクハラ・パワハラが主流でしたが、最近では、トラブルの内容が多様化してきています。そこで、各保険会社は補償の範囲を拡大しています。
例えば、多くの保険会社が、マタニティハラスメント(妊娠や出産、育児に関するハラスメント)やケアハラスメント(介護中の従業員に対するハラスメント)を補償範囲に含めるようになりました。他にも、モラルハラスメント(言葉や態度で嫌がらせをするハラスメント)、カスタマーハラスメント(顧客から理不尽な要求をされるハラスメント)に備える保険もあります。
さらに、ハラスメントの被害者も多様化しています。例えば、自社に勤める従業員が、取引先の従業員に対してセクハラをしたり、子会社の従業員に対してパワハラをしたりすることも十分起こり得ます。
そのようなケースでは、取引先の従業員や子会社の従業員から企業が訴えられることになります。そうした訴訟リスクに備えるため、自社の従業員からだけでなく、取引先の従業員や子会社の従業員からの賠償請求についても補償範囲に加える商品が出てきています。
また、中にはトラブル発生後の記者会見のサポートやおわび文書の作成方法の指南を受けられたり、ハラスメントセミナーなどを受けられたりする商品もあります。
いろいろなタイプのハラスメント保険があるので、加入を検討する際は、自社の置かれた状況に合わせて、必要な補償を提供してくれる商品を選ぶことが大切でしょう。
5月19日(木)公開の後編では、パワハラ防止法の適用に伴って中小企業が対応しなければいけないことや、取り組んだ方が良いことについて、解説します。
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