「どうせ録画してるから」と、Web会議で気が緩むなら 茶道に学ぶべき「一期一会」の精神:茶道に学ぶ接待・交渉術(2/3 ページ)
オンライン会議が録画されて、終了後に録画のサイトにアクセスさせてもらえる、という場合も増えてまいりました。録画の許可を求めるサインがあると、つい気が緩んだという経験はありませんか? 今回取り上げるのは、こんな時に思い出したい言葉「一期一会」です。
ルーツは一期に一度の会
「一期一会」という言葉は、「一期に一度の参会」という言葉を凝縮することで生まれた言葉です。そして、「一期に一度の参会」という言葉は、千利休が「一座建立」という初心者に向けての教えに不満を持っていたという文脈で使われています。
「一期に一度の参会」という言葉は、『山上宗二記』という茶書に記されています。筆者の山上宗二は、利休と同時代の茶人です。この時代の堺では、茶の湯は盛んに行われていました。仕事が始まる前の朝会、終わってからの夕会がかなり頻繁に催されています。今日(こんにち)でいう朝食会的な意味もあたったかと思います。
「そもそも、朝や夕方、会合の間に行われるような会であっても、新しい道具を披露する場合、または口切りの会は言うまでもなく、いつもの茶の湯であっても、路地に入ってから出るまで、一生に一度だけ参加する会であるかのように、亭主に深く心をそそいで、畏敬の念をもって接するべきである」と利休が伝えたと『山上宗二記』には記されています。
つまり、「道具披露や、夏の間保管しておいた新茶を初めて使うというまれに催される会ならば、改まった会という意識を持てる。これに対して、常の会では、改まった気持ちを維持しにくいが、一生に一度の心がけで参加すべきだ」との見解を利休が示したというのです。
「一座建立」という言葉は、世阿弥の『風姿花伝』では、「この芸とは、衆人愛敬をもて、一座建立の寿福とせり」と使われています。観客から愛されることに演劇集団である能楽は一座の運営の浮沈がかかっている、という意味ですから、茶会に当てはめれば、お客様が喜べば亭主は何をしても良い、と「一座建立」の教えを実践する亭主もいたのかもしれません。
ただし、金春宗家相伝の秘伝書であった『風姿花伝』が世に知られたのは20世紀に入ってからであることを厳密に考えれば、『山上宗二記』の解釈に、『風姿花伝』を援用してよいのか、迷うところです。そこで、「一座建立」の項目では、同時代の茶書の客の心得から意味を考えてみました。
茶会も、参加者によって評価されるという点では、能楽と共通することがあります。その点では、『風姿花伝』を参照することは一定の妥当性があると考えます。
ただし、茶会の参加者は、客といっても、一方的に演能を見ている存在ではありません。自分たちの行動も茶会の一部を構成するところが、演劇とは異なります。現代風にいえば、会議において招かれた出席者であっても単なる観客では済まされず、出席者の発言も会議を構成する重要な要素であるのと同じことです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
幹部候補か、“万年ヒラ”か キャリアの分かれ目「30代以降の配置」を、人事はどう決めている?
「育成」の観点から異動配置させる20代が過ぎると、多くの企業は「幹部候補の優秀人材」と「それ以外」の社員を選別します。人事は、そうした異動配置をどのように決めているのでしょうか。年代層別の異動配置のロジックをみていきます。
「優秀でも残念でもない、普通社員」の異動に、人事が関心を持たない──何が起きるのか
社員の異動を考える際、人事部が真っ先に関心を持つのは「優秀社員」と「残念社員」。その間にいる大多数の「普通社員」は後回しにされがちという実態がある。しかし、この層への取り組みを疎かにすると、ある懸念が生まれる。
「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。
「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか?