なぜJR東海は、わざわざ奈良でキャンペーンを始めたのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/9 ページ)
JR東海の奈良キャンペーン「いざいざ奈良」がスタートした。これまで17年間、JR東海の奈良キャンペーンは「うましうるわし奈良」として展開されてきた。それをなぜ変えたか。なぜ今なのか。背景を考える。
通勤路線を持つ各社は休日需要拡大のために観光輸送と観光キャンペーンに力を入れる。JR東海は同じことを東海道新幹線で始めた。近年、常に乗車率が高まっている理由は、JR東海とJRグループ、旅行業界を巻き込んだ観光キャンペーンの成果である。
JR東海の観光キャンペーンは京都と奈良の知名度が突出しているけれども、ほかにも東京、横浜、静岡、愛知、飛騨高山、伊勢志摩などでキャンペーンを展開し、旅行商品と組んだツアーを販売している。
静岡県の観光に積極的に取り組めば、静岡県民の好感度も上がるだろうと思ったら、「いい旅、沸いてます。〜伊豆・熱海・箱根〜(21年)」「おんせん圏〜伊豆・熱海・箱根〜(22年)」などを実施していた。広告キャラクターとしてデヴィ夫人を起用して話題になっているという。
東京で伊豆・熱海・小田原のキャンペーンをしても、新幹線の利用は東京〜小田原〜熱海間と短いし、JR東日本の「踊り子号」に流れてしまいかねない。だから首都圏では目立たせていない。
東京観光キャンペーン「東京ブックマーク」は関西出張時にポスターやテレビCMを見かける。かなり大がかりに見えるけれど、名古屋と大阪を中心に展開するから、東京近郊在住の人は知らない。
なぜJR東海が管轄外の奈良キャンペーンをやるかというと、東京・名古屋方面から奈良を訪れる人々が東海道新幹線を使うからだ。奈良にJR東海の駅はなくても、奈良は東海道新幹線圏の沿線観光地だ。それでも京都・奈良キャンペーンは突出しているけれど、観光地の集客力、収容力と集客できる大都市を結んだ結果だ。
05年のキャンペーン開始から10年間のポスタービジュアル写真集。ひとつの区切りのようだけど「うましうるわし奈良」はこのあと7年も続く長寿企画となった。
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