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なぜJR東海は、わざわざ奈良でキャンペーンを始めたのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/9 ページ)
JR東海の奈良キャンペーン「いざいざ奈良」がスタートした。これまで17年間、JR東海の奈良キャンペーンは「うましうるわし奈良」として展開されてきた。それをなぜ変えたか。なぜ今なのか。背景を考える。
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「いざいざ奈良」で増える観光価値
「うましうるわし奈良」と「いざいざ奈良」の違いはなにか。簡単にいうと「歴史の旅」から「現在の旅」になる。「うましうるわし奈良」は奈良にある歴史、寺社、国づくり、信仰を探し感動する旅。「いざいざ奈良」は、歴史を踏まえた上で、現在を生きる人々が織りなす新たな感動の旅。歴史だけではなく、食、風景、工芸など、新たな奈良名物を推していく。
四文字熟語で例えれば「温故知新」から「不易流行」だ。温故知新は「奈良にある歴史と伝統から、自分の中に湧く新しい心を感じる旅」、不易流行は松尾芭蕉と門流の理念「芭蕉俳諧」のひとつ。本質的な変わらぬもの(不易)も、常に新しいもの(流行)を取り入れ、それがまた伝統に加わっていく。それが「いざいざ奈良」に通じると私は読み取った。
具体的な話をすると「うましうるわし奈良」の広告は神社仏閣とその周辺の風景を前面に押し立てていた。私の手元に「うましうるわし奈良の10年」という写真集がある。初版は15年で、05年のキャンペーン開始10年を記念して出版された。
内容はキャンペーンポスターに使われた写真と、イラストレーター・田中ひろみさんの「奈良仏像探訪記」、甲斐みのりさんによるエッセイ「奈良を歩く」。巻頭には奈良出身のタレント、堂本剛さんの言葉がある。
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