なぜJR東海は、わざわざ奈良でキャンペーンを始めたのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/9 ページ)
JR東海の奈良キャンペーン「いざいざ奈良」がスタートした。これまで17年間、JR東海の奈良キャンペーンは「うましうるわし奈良」として展開されてきた。それをなぜ変えたか。なぜ今なのか。背景を考える。
「いざいざ奈良」のテレビCM「東大寺・ならまち編」は、鈴木亮平さんが東大寺を紹介したのち、鹿と戯(たわむ)れ、かき氷を味わい、カクテルを嗜(たしな)み、展望露天風呂でくつろぐ。寺社だけではなく、かき氷、カクテル、露天風呂を入れたところが新しさ。「奈良といえば歴史」というイメージを覆そうという勢いだ。
ただし、その「新しい」には寺社も含まれる。たしかに建物は古いけれども、博物館ではない。終わったところではなく、歴史は続いている。務める人は現在を生き、日々新しい朝を迎える。そこに旅人と共感するところもある。
かき氷は全国的なブームになっている。縁日の屋台や駄菓子屋のイメージから、甘味処、カフェのメニューとなった。そのなかでも奈良は「かき氷の聖地」「かき氷文化はじまりの地」と呼ばれ、多数の店舗がメニューを競う。今日のおしゃれなかき氷ブームの尖端(せんたん)は神奈川県藤沢市の「埜庵(のあん)」だという。しかし、奈良には「氷食」の伝統がある。
和銅3年(西暦710年)、春日山の奥地に元明天皇の勅命で氷の神様を祀る神社が創建された。天然氷を貯蔵する氷室が置かれ、4月から9月まで、平城京に氷を届けた。この神社を氷室神社という。現在も氷の神様として、製氷業界など氷や冷凍冷蔵技術に関わる人々が参拝しており、繁忙期を避けた5月1日には献氷祭が行われ、業績祈願が行われる。
14年からは「ひむろしらゆき祭」が開催され、全国のかき氷店とかき氷ファンが交流を深める。「氷食」は歴史と伝統だけど、かき氷は新鮮な氷でつくられる。まさに不易流行である。
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