ワークマンの靴専門店、業界一強「ABCマート」の牙城を崩せるか:磯部孝のアパレル最前線(2/5 ページ)
ワークマンは4月1日、スピンアウトさせた新業態「ワークマンシューズ」が、大阪市の商業施設「なんばCITY」オープンした。日本のシューズ市場はエービーシー・マート一強の時代が続いている。その理由とは?
アパレル以上に強い「ブランドイメージ」
エービーシー・マートは、94、95年に「VANS(ヴァンズ)」「HAWKINS(ホーキンス)」の国内商標権使用の契約を締結。この戦略は、知名度のないPB(プライベート・ブランド)を一から商品開発しプロモーションするといった、認知までに時間のかかるやり方ではなく、ある程度知名度のあるブランドをPB化できたのがその後の成長を支えたのではないか。
シューズ業界は、アパレル以上にブランド力が強い印象を持つ。ドレスシューズにおいては、木型から作成するなど、「職人技術」を生かした高価格帯ブランドから、「防水」や「快適な履き心地」といった機能性を訴求するものまで、ブランドステータスも広い。その中で、生活者は長い時間履き続けても痛くならないシューズを探し、自分の足の形にフィットしたブランドが選ばれてきた。
スニーカーも、ブランドイメージが与える安心感は絶大だ。とある人気のスニーカーを例にとっても、「○○ブランドの○○モデル」と、機能やデザイン別に数字の入ったモデルが存在する。このようにシューズ業界は、ブランド×モデルの指定買いが多い業界だと考えられる。
こうしたNBへの圧倒的な支持基盤があってこその戦略的PBとなる訳で、エービーシー・マートの場合は、「国内商標権の使用ができたNB」と「それ以外のNB」という2タイプの品ぞろえを可能としたことが、伸長できた一つの要因だと思う。
以上の事例を踏まえ、話をワークマンシューズに戻す。オープン時点での商品数は62アイテム。品ぞろえは100%PBによる展開だ。「ワークマン」を一つのNBと捉え、ユニクロやジーユーで例えるならば「シューズ売り場がスピンアウトした」とのイメージに近い。
ただ、ユニクロやジーユーと違うのは、「ファイングリップシューズ」や「アクティブハイクシューズ」といった生活者の「あったら良かった」と思わせる機能目線と、アクティブレジャーの初心者向けに、手に取りやすい価格を実現させてヒットした商品を複数持っていることだ。
当然、ジーユーでも「マシュマロパンプス」といった、キャッチーなネーミングセンスと機能アピール訴求の上手さでヒットしたシューズはある。ただ、ファッションウェアとのコーディネート商品としての色合いが濃く、価格を含め、シューズ単体での価値観は、ワークマンが取り扱うシューズと少し異なっているように思う。
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