コロナ禍で株価が急落──アイスタイル菅原CFOは、“株価の波”をどう乗り越える?:対談企画「CFOの意思」(3/3 ページ)
「CFOの意思」第2回の対談相手は、アイスタイル取締役CFO・菅原敬氏。2015年の株価上昇、19年の下落にCFOとしてどう対応し、策を練ったのか。ファイナンス分野は「ほぼ未経験」でも、CFOとしてIPOをリードできた秘訣とは? グロース・キャピタルの嶺井政人CEOとの対談。
ファイナンスは未経験でCFOに コンサル出身だからこそ発揮できた“強み”
嶺井: 菅原さんはもともと、第二新卒として現在のアクセンチュアでコンサルティングをされていました。CFOになるまで、ファイナンスや会計などのバックグラウンドはありませんでしたよね。CFOとしてそれゆえの大変さや、コンサルティング出身だからこその強みなどぜひ聞かせてください。
菅原: おっしゃる通り、英国の大手化学メーカーで短期間、財務アナリストをしていただけなので、ファイナンスの分野はほぼ未経験と言ってよい状態です。ただ一方で、帰国後は8年間強コンサルティング業務をしていたので、経営を取り巻く市場の話や消費者動向、ビジネスモデルの強みや弱みなどを整理して説明するのが得意である、という強みがあります。投資家や関係各所に説明するのに必要なスキルですね。
また、複雑なプロジェクトを整理して、推進するのに必要な状態まで落とし込むことも得意でした。これも、コンサルティング時代に培ったものです。
もう一つあります。それは、“分からないことは聞く”というもの。コンサルティングでは、案件によってクライアントの業種が全く違う。例えば、ある週は「原油の輸入戦略について考えてきて」と言われ、それが終わったら「通信回線の解約率低下のためのマーケティング戦略を考えてきて」となる。しかも、初日のキックオフでは、たとえ新卒1年目であったとしても、“知ったような顔”で話さなくてはいけない。
そうなるためには、いろいろな人に聞いて、素早くキャッチアップし、エキスパートに近い状態にならないといけない。そのスキルを獲得できたのはコンサルティング会社にいたからだと思います。
嶺井: そのスキルはCFOとしてどのように活用されたのでしょうか。
菅原: 私がCFOに就任した当時、ミクシィ取締役CFOの小泉(文明。現メルカリ取締役会長)さんに、「CFOは何をしたらいいのか」と聞きに行ったのはいい思い出です。そこで、ファンドマネジャーやアナリスト、大手証券会社の人を紹介してもらうことができ、さまざまな教えを請うことができたんです。
嶺井: なるほど。分からないことは聞く、そしてすぐに自分のものにする。これは確かに重要ですね。では、弱みという面ではどうでしょうか。
菅原: 細かい仕分けなどは分からないですね。もちろんコンサルティングをしていたので、最低限の会計や財務諸表の読み方は理解していましたが、細かい部分で、手触り感がない。資金調達も分からないし、資本市場も分からない。
ビジネススクール時代にコーポレートファイナンスの授業を受けていますが、教室で勉強しているのと、実際に自分たちが発行体となるのとではわけが違う。どういう手法で、どのような設計で資金調達をするのかが分からない。
そこで、たくさん提案書をいただき「理解できない」となったところで、証券会社に聞く。他のCFOにもたくさん相談する。そういう学びを通して、今があります。
今でも、証券会社の皆様から資金調達の提案書をもらっても、毎回、読み込んで勉強しています。資本市場のやり取りに関して言えば、場数を踏んで、何とかなっているのではないかと考えています。ちょっとダメな感じのCFOですね(笑)
嶺井: いえいえ、情報収集力とキャッチアップ力は菅原さんの大きな強みということですね。
後編ではキャリアについてや、菅原氏の考える“CFOの在り方”について探る。CFOとは「嫌われる役割」と語るその真意とは。ファイナンスは「ほぼ未経験」でCFOを務めることになったのはなぜなのか?
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