月400時間労働のブラック企業、平均残業4時間の超ホワイト企業に 大変革を支えた「3つの制度」とは?:離職率は20→2%に(3/3 ページ)
2000年創業のシステム開発のゆめみ、一部の創業メンバーの当時の労働時間は月に400時間を超えていたという。離職率が20%超えの時期もあった。創業したばかりという状況はあるものの、ブラック企業と言っても過言ではない。そんな企業が改善を重ね、月165時間労働・離職率2%にまでたどり着いた。どのような取り組みがあったのだろうか? 変革の要となった3つの制度とともに振り返ってみたい。
まるで夢みたい 「有給も好きなだけ取れる」
同じことは「有給取り放題制度」にもいえる。こちらも「全社員がCEOならば理論」で導入が決まった制度だ。給与に見合う成果さえ出していれば、何日だろうが、どんな理由だろうが休んで構わないというスタンスだ。もちろん、有給休暇の申請理由も問わないし、出勤・退勤時刻も申告制で、厳密な管理はしていない。
極端な話、1日だけ働いて年間364日の有給休暇を申請することもできる。さすがに、ここまで極端な過去事例はないものの「その1日で給与に見合うパフォーマンスが出せるのであれば休んでもいい」というのが同社の方針だ。
全社員が代表取締役権限を持ち、給与は言い値、有給は取り放題と聞くと、経営は大丈夫なのか心配になってくる。ところが、アジャイル組織宣言を出した18年からは4期連続の増収、21年度は前年同期比で20%増を記録した。
その理由の一つは、以前は20%を超えたこともあった離職率が、21年時点では2%にまで下がったことが挙げられる。結果、新たに人材を採用したり、教育したりするコストが大幅に削減できたのだ。現在では残業も激減し、全従業員の平均残業時間は月当たり4時間程度。かつての1日20時間労働から8時間労働と適正水準にまで落ち着いた。
給与を自分で決めることができ、勤務地・勤務時間は自由。有給も取り放題で残業もほとんどないとなれば、特別な事情でもない限り退職する理由が見当たらない。
同社の社員数は、22年5月現在で約280人。目標である1000人体制の3割弱といった状況だ。とはいえ新卒の採用数は22年卒が31人と急速に社員数を増やしており、23年卒には61人、24年卒には100人の採用を目標にしているという。離職率の低さも考えると、今後数年で1000人体制も視野に入ってきている。
現在の制度について社員から不満の声は出ないのか尋ねると、「(経営は大丈夫なのかという)不安の声は聞きますが、不満はありませんね」妹尾氏は笑った。
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