「やりたいことができない」と新人が早期離職──防止のため、企業がすべきこととは?:「3つの円」のフレームワーク(2/3 ページ)
新入社員の早期離職は、多くの企業において深刻な課題となっている。「やりたいことができない」と若手が離職してしまうのを防ぐために、企業は何をすべきなのか。
仕事の動機にはどんなものがあるのか
ここで、15歳から29歳までの若者に、仕事観や将来に対してどのような展望を持っているかなどについて尋ねた、内閣府「若者の考え方についての調査報告書(平成24年5月)」を見てみましょう。「仕事を選ぶ理由」を正規雇用で働く若者と学生とで比べてみると、どちらも「収入を得るため」(正規雇用者64.2%、学生59.9%)、「自分の生活のため」(正規雇用者55.4%、学生52.4%)など、堅実な経済生活を意識した理由が多くなっています。
一方で、「自分の夢や希望を叶えるため」(正規雇用者9.7%、学生19.7%)や「多くの人の役に立つため」(正規雇用者2.4%、学生7.8%)では両者の違いが大きく、学生は、仕事に理想や自己実現を求める傾向が比較的強いことがうかがえます。
早期退職の理由としてよく挙げられる「自分のやりたい仕事ができなかった」とは、業務の内容だけではなく、仕事に対する理想と現実のギャップが原因となるケースが多いのです。
「will-can-must」のフレームワーク
早期退職を予防するために、仕事の動機に着目し、個人の欲求に偏り過ぎず、正しい職業観を身に付けることに活用できる、「will-can-must」のフレームワークを紹介します。
これは、目標設定などでよく使われるもので、will(実現したいと思っていること)、can(いまできること、できるようになるべきこと)、must(いますべきこと、他者から求められること)の3つで構成されています。
そして、これが図のように3つの円が重なる部分が大きくなるほど、成果を残したり、モチベーションを維持しやすくなると考えられています。
若手の社員はwillが大きくなる傾向に
これに若手社員を当てはめてみましょう。若手社員の場合、会社から求められるcanやwillが限られ、非常に小さい状態であることが通常です。
あわせて、採用選考の際にも、学生時代に力を入れたことだけでなく、将来、会社でどのように活躍したいかといった展望など、willを重視したテーマの質問をする会社が増えていることから、willへの意識が大きくなっているとも言えます。
しかし、実際に入社してみると、新入社員はまずその会社での既存業務を理解し、成果を出すためのベースづくりをする必要があることが通常で、mustの仕事が多くなるものです。
その結果として、willとmustの不均衡が生じ、「やりたいことができない」と思い込んで早期に退職してしまうことが考えられるのです。
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