就活戦線に異状あり──10年前の人気企業がTOP10から“消滅”した理由:13卒と23卒の人気ランキングを比較(1/4 ページ)
マイナビの2013年卒と23卒の就職人気企業ランキングを比較したことで分かったこととは?
外資系企業など一部を除く、各企業は6月1日、2023年春に入社する新卒学生向けに、面接など各選考を始めた。ただ、これはあくまで表向きのスケジュールであり、既に選考を終え、学生に内々定を出している企業も多くあるだろう。
記者も過去、事前に“面談”(という名の事実上の選考)などで内々定を出し、日本経済団体連合会(経団連)が「面接解禁日」と指定した6月1日ごろに、本社で採用担当者ら幹部と軽く雑談し、握手するという形だけの“選考”(一部の就活生は「握手会」と皮肉を込めて呼んでいた)を経験したことがある。
23卒の就職活動が大詰めを迎える中、10年前の人気企業ランキングと比較し、ランクインした企業の顔ぶれにどんな変化があったのか、各企業の直近の業績動向も絡め、検証する。
13卒文系学生の人気トップは5年連続で「JTB」
比較対象のランキングには、マイナビが発表した13卒と23卒向け調査を採用した。文部科学省傘下の教育政策研究所が13年3月に発表した「中学校・高等学校における理系選択に関する研究最終報告書」によると、高校3年生の文理選択状況は理系が32%、文系が68%だったという。このため、就活中の大学生も文系が多数派だと仮定し、まずは文系の人気企業ランキングを見てみよう。
マイナビが12年3月に発表したランキングによると、文系就活生の人気企業ランキング1位は旅行業最大手「JTB」で、2位「全日本空輸」(全日空、ANA)に大差をつけ、5年連続1位(当時)となった。結果的にJTBは、17卒ランキングまで9年連続トップに君臨することになる。「やりたい仕事ができそう」「業界上位である」「国際的な仕事ができる」などが、学生からの支持を得た主な理由だという。
同社は20卒ランキングで3年ぶりにトップに返り咲き、21卒ランキングでも首位をキープするも、22卒ランキングではトップ10圏外の35位に急落している。
コロナ禍で状況一変
急落した要因としてマイナビが指摘しているのが、コロナ禍だ。日本政府観光局(JNTO)の統計では、19年度の訪日観光客数は過去最高の3188万人を記録。19年秋のラグビーW杯開催でインバウンド観光のニーズが高まった。
だが、20年1月以降のコロナ禍による入国制限で訪日観光客数が大幅に減少した上、大量の観光客を見込んでいた20年7月の東京五輪・パラリンピックも1年後に開催が延期された。国内でも緊急事態宣言の発出などで移動が制限され、旅行需要が大幅に減少。一転して、同社は苦境に立たされた。
実際、JTBの苦境ぶりは業績にも現れている。20年3月期のグループ全体の連結決算では売上高は前期比5.8%減の1兆2886億円と微減に抑えたが、本業のもうけを示す「営業利益」は同78%減の14億円に大幅に減少した。
本社ビルも売却したJTB
翌21年3月期の連結決算でも状況が好転することはなく、売上高は3721億円(前期比71.1%減)、営業損失は976億円、純利益に関しては過去最大の1052億円の赤字を記録。業績改善のため、本社ビルなどの売却を余儀なくされた。
期待された東京五輪も、コロナが収束せず、結果的に無観客開催となった一方、保有資産売却や、ワクチン接種会場とコロナ療養者へのホテル手配などの受託事業が功を奏した。5月27日発表の22年3月期の連結決算で、売上高は5823億2300万円(前期比156.5%)と増加したほか、営業損失も48億8000万円と大幅に縮小。2年ぶりに284億6100万円の黒字回復を果たした。
黒字回復は果たしたものの、JTBは「入国制限などで外国人旅行の需要は2年連続でほぼ消失した」としており、コロナ前の状態に業績が回復するには、今後もしばらく時間がかかるとみられる。
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