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佐賀県の負担金は? ゲーム理論で導き出した「九州新幹線西九州ルート」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/7 ページ)

「九州新幹線西九州ルート」の新鳥栖〜武雄温泉間の着工の見通しが立たない。理由の1つが「佐賀県の負担金問題」だ。佐賀県は在来線で不満はなく、フル規格の費用負担は見合わない。経済学のゲーム理論によれば、3者が最も合意しやすい負担額は「佐賀県と国の負担減、長崎県の追加負担あり」と試算された。

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「属地主義」から「応益主義」へ転換せよ

 ここまで「佐賀県が納得する負担額」を求めてきた。しかし、論文が成立する過程で、現在の新幹線建設の枠組み、いや、鉄道新線建設、赤字ローカル線の自治体負担について、重要な問題提起があったように思う。

 そのキーワードは「属地主義」と「応益主義」だ。

 属地主義は「線路がある自治体が負担すべき」という考え方だ。いままで新幹線はほとんどの地方自治体で切望、歓迎されてきた。「建設費も負担します。並行在来線も引き受けます。だって新幹線があれば、負担を上回る便益がありますから」というわけだ。しかし、今回の佐賀県のように「負担と便益が見合っていない」という声が上がった。

 最も便益を受ける地方自治体の線路は短く、便益の少ない地方自治体の線路は長い。それでも線路の距離に応じて負担額を決めるという枠組みは正しいだろうか。属地主義はもう通用しないのではないか。

 これはローカル線問題にもいえる。幹線のA駅から分岐して終端駅のB駅を結ぶローカル線がある。このローカル線はA市の区間が2割、B町の区間が8割。そして乗客のほとんどはB町の人々だ。このローカル線で存廃問題が起きたとき、属地主義で考えればA市が2割を負担する。しかし、応益主義で考えればB町の人々にとって必要で、A市にとって必要ではない。このとき、A市は支援金に応じるだろうか。


ゲーム理論はローカル線存続問題に応用できる

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