トヨタは10年越しの改革で何を実現したのか? 「もっといいクルマ」の本質:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
素晴らしい決算を出した裏で、一体トヨタは何をやってきたのか。サプライチェーンの混乱というアクシデントをカバーする守りの戦い、そして台数を減らしても利益を確保できる攻めの戦い。そこにあるのが「もっといいクルマ」だ。
TNGAとは一体何か
ではそのTNGA改革を進めるためにトヨタは一体何をしたのだろう?
すでに述べた通り、TNGAはトヨタの体質改善であり、強靱化だ。その中心にあるのはまず何よりも「製品が良いこと」だ。当たり前の話だが、ラーメン屋の経営を立て直すならまず美味くなければ話にならない。だからトヨタは美味しいクルマを作るために尽力した。
そのために取り組んだのがカンパニー制である。以前からフルラインアップメーカーであり、極めて多くの車種をずらりと並べてきたトヨタは、どうしても一台ごとの手の掛け方に差が出やすかった。例えばクラウンやカローラという看板車種には予算も人も付きやすい。しかし社内でそれほど重視されていないクルマはエアポケットに入って、どうしてもリソースの配分にありつき難い。
なのでカンパニー制を導入して、車種をグループ分けし、カンパニーごとの受け持ち車種全部に責任を持たせることにした。同時に面倒を見きれないほど増えたラインアップを整理して、一台一台にしっかり手を掛けられるように見直しも行った。
「もっといいクルマ」を実現した結果が図に表れている。カンパニー制導入前、過去最高益を出した16年3月期と22年3月期を比較すると、「為替/台数」「資材価格」「固定費」が全部アゲインスト。にも関わらずそれら全てを収益改善でカバーし切った。上の囲みの中に書いてあるように、「為替・台数・資材価格のマイナス影響下で、増益」に持ち込んだ。TNGA以前の体質だったら減益になっていたところである。
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