「心から会社に貢献したい」と従業員に思わせるため、人事ができること:連載「情報戦を制す人事」(2/4 ページ)
生産性向上や離職防止といった効果が期待できる「従業員エンゲージメント」の施策。しかし、取り組み方を間違えると、従業員に対して誤ったメッセージを発信してしまいかねません。効果的に実施している企業事例や、取り組みの具体的なステップを解説します。
2.グローバル製造業B社
10年以上前から毎年グローバルにエンゲージメントサーベイを実施する同社では、エンゲージメント向上のサイクルが企業に定着しています。
一方、従業員から「実際にアンケートで回答した内容が改善されているか分からない」という声も多いことが課題でした。そこで、同社が運用の見直しを図った事例を紹介します。
背景
主な要因として、エンゲージメントサーベイ実施から現場管理職へフィードバックをするリードタイムが長かったことが考えられました。
グローバル企業であり、地域・部門単位で少しずつ質問を変えていたことや、分析もそのリージョンの特性に合わせて実施していたためです。
取り組み
フィードバックまでのリードタイム短縮が改善のカギだと判断し、以下の対策を実施しました。
- 多少のリージョン特性の差に目をつむり、グローバルで統一したエンゲージメントサーベイにする
- 複雑な分析をせず、エンゲージメントサーベイ後すぐに結果開示できるような分析に留めた
結果
これらを実施することで、大幅にエンゲージメントサーベイの結果を現場へフィードバックするリードタイムを短縮できました。
活用方法
管理職からは結果を早期に把握できることで下記2点について感謝の声がありました。
- 分析結果について、これまで以上に理解を深められるようになった
- これまでより早く対策を考えられるようになった
一方で、人事(またはHRBP)にとっては支援のハードルは上がったとのことです。これまでは、人事が先にデータを見て時間をかけて分析、解釈をしてその結果を現場管理職に伝えるという流れでした。
しかし、分析結果を人事と現場管理職が同時に見ることで、現場管理職はこれまで人事から伝えていた結果に自分たちでたどり着き、これまで以上に深い質問を人事にするようになりました。人事としてはその分、これまで以上のデータ分析力や考察力が要求されるようになったようです。
人事側で管理職へのフィードバック後の支援がどれほどできるかが、今後の従業員のエンゲージメントの上下に影響を及ぼすと考えられます。
エンゲージメント向上に必要な取り組み
エンゲージメントを向上させることは、従業員が仕事や組織に対してより意欲的に取り組める状態にすることを意味します。前述したエンゲージメントサーベイは現状把握の方法の一つですが、実際にエンゲージメント向上へつながる施策を実施するためには、段階的な取り組みが必要です。
ステップごとにポイントを見ていきましょう。
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