花王、マスマーケティングからの脱却狙う 新部署設置1年で見えてきた「課題」とは:「売って終わり」から「もう一度」に(2/3 ページ)
化粧品・日用品などに多くのブランドを擁する花王は、2021年1月に大規模な組織改編を実施、DX戦略推進センターを新設した。同センターの目的は、デジタルデータを活用したカスタマーサクセスの実現だ。顧客を成功体験に導く花王の手法、そして見えてきた課題とは?
デパ地下コスメの改革に着手
花王が運営するコミュニティーサイト「Kao PLAZA(カオウプラザ)」は会員同士が花王製品の情報を交換する場だが、DX戦略推進センターから見れば顧客の声を収集するための場だ。約180万人の会員がいる同サイトには毎日数千件の投稿がある。
鈴木氏は「例えば食器用洗剤『キュキュット』を愛用している人がいたとして、その理由が『泡切れがいい』だと分かったら、商品パッケージで“泡切れの良さ”を訴求するといった具合に顧客の声を生かしている」と明かす。同様にテレビCMや商品パッケージなどにも顧客の声を反映している。会員の声が製品に反映された際は「お客様の声が形になりました」とサイト上で報告しているとのことだ。
コミュニケーションのデジタル化のため、美容部員を派遣している百貨店などには店頭顧客システム「FACE(system For Advanced Customer Engagement、フェイス)」を導入している。このシステムを利用すれば、顧客は店頭での肌解析の結果などを自分のスマートフォンで確認できるほか、オンラインカウンセリングやバーチャルメイクといったブランド体験も可能になる。コロナ禍で来店機会は減っているが、オンラインで肌の悩みやメイクの仕方など相談できれば花王製品を使い続けるきっかけになる。
また「くすみAIファインダー」「ブローネ 髪色シミュレーション」といったスマホアプリも、デジタル技術によるブランドコミュニケーション促進の一環と言える。前者はAIが肌のくすみを測定してくれるもの。後者はブローネ(白髪用ヘアカラー)で染めたときの色合いを自分の写真のバーチャル合成で確認できるというものだ。「どんな商品なのか、それが自分に合うのかが分かれば、それがトライアルにつながる」と鈴木氏。そうした体験もカスタマーサクセスの一つだろう。
鈴木氏は「リテンション型ビジネスでは、顧客との接点を生み、体験を提供し、絆をつくっていくことが重要。マーケティングは商品の購入後に始まる」と話す。「デジタル化と言うと無機質に聞こえるかもしれないが、ロボットではない。商品を介した向こう側にあるブランドメッセージを伝えるための、人と人とのコミュニケーションの道具だと考えている」(鈴木氏)
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