6月1日「選考解禁」なのに、5月で内定率6割のなぜ 就活生の“悲痛”な声に大きな反響:政府方針と民間調査を比較(3/3 ページ)
「就活って6月解禁なのに6割内定持ってるってのは嘘だよな?」とするTwitterの投稿が注目を集めている。投稿者は就職活動中の学生とみられる。現行の就活日程と就活生向け民間調査を比較し、検証する。
早期選考促進の背景に経団連の指針
他方で、選考の早期化を進めたい企業側の気持ちも理解できる。優秀な人材は、早期に確保しなければ、他社に取られてしまう恐れがあるためだ。特に理系人材は、企業間で人材の獲得競争が加速している。
企業の早期選考化を進めた“元凶”が、かつて日本経済団体連合会(経団連)が主導した「採用選考指針」(「倫理憲章」とも呼ばれた)だ。指針では、現行の政府方針同様、企業の広報活動や選考解禁日に関する方針を示していたが、経団連加盟企業以外は対象外となっていた。
そこを外資系企業や新興のIT企業、ベンチャー企業が「抜け穴」として突き、優秀な学生をインターンなどで早期に確保する動きが多発した。つまり、経団連の指針を順守した企業が、損する事態を招いたのだ。
こうしたことから、大手企業でも早期インターンなどで内々定を出すケースが徐々に増加。経団連の指針が事実上の紳士協定で、強制力もなく、罰則規定がなかったことも、企業の早期選考を促進した。その後、経団連は、指針が形骸化しているとして、20年卒を最後に採用選考指針を廃止。21卒以降は政府が、企業向けの方針策定を引き継ぎ、現在に至る。
「早起きは三文の徳」という言葉があるように、早期に就活を開始し、インターンなどに積極的に参加した学生が、企業から早期内定をもらうのは「努力の対価」として当然のことだ。政府は方針を策定する理由に、学業への専念などをことさらに強調しているものの、研究が忙しい理系の学生や教育実習に参加する学生、公務員試験の受験を目指す学生など一部を除き、多数派とみられる文系の学生を中心に、優秀な学生こそ、学業と就職活動を両立できるという見方もあるだろう。
大学入学直後から就活を意識する学生がいる一方で、就活日程に関して混乱が生じているのも事実だ。学生だけでなく、政府方針の解釈を巡り、企業側が混乱している可能性もある。政府はこうした事態を受け止め、就活日程の方針を撤廃し、通年採用を本格導入するのか、それとも政府方針に強制力を持たせるのかなど、態度を明確にする時期に来ているのではないか。
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